2017 Fiscal Year Research-status Report
スペイン植民地の都市計画史料が示す近世および近代都市計画技術の連続性と相違
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16K06675
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
加嶋 章博 摂南大学, 理工学部, 教授 (80390144)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スペイン / 植民都市 / インディアス古文書館 / グアテマラ / 都市計画技術 / 近世都市 / バルセロナ / アカデミー |
Outline of Annual Research Achievements |
スペイン国立インディアス古文書館では、旧スペイン植民地をエリア別のセクションに分け、計7000以上の都市図等を保存している。本研究ではその視覚的資料(イメージ資料)と都市建設に関わる文書(テクスト資料)の史料分析を進めている。2017年度は前年度に整理したグアテマラ・セクションの史料から、都市計画要素の抽出作業を行いデータベース化したものに対し、都市計画技術に相当する内容を検討した。 蓄積したデータベースのうち前年度に実施した地理条件の認識、都市の輪郭(境界線)、宗教施設等の配置に関する作図の分析等に加えて、新たにMP-GUATEMALA,302、319、324の3点を中心に、グリッドパターンの計画、土地区画の内容、都市の輪郭決定などに関する計画性を分析し、都市図カルテの作成を進めた。 さらに、こうした一次史料が示す都市計画技術の分析とあわせて、スペイン植民地時代のこうした都市計画技術がどのようなところで指導されてきたのかという関連テーマに取り組む必要性を感じ、調査を開始した。教育機関の歴史的調査を通して、まずは18世紀にバルセロナに設立された軍事数学アカデミーにおいて、都市計画技術に相当する内容が教育されていたことが明らかとなった。その内容を査読論文にまとめ、下記のジャーナルに発表した。 Akihiro Kashima, “City Planning and Architectural Education in the Establishment of the Academies in 18th-Century Spain”, The Journal of Asian Conference of Design History and Theory No.2, Design Education beyond Boundaries, Tokyo, 2017, pp.41-52.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
スペイン国立インディアス古文書館に保存されているスペイン植民地時代の都市計画に関する史料分析を通じた「都市計画」技術の同定作業は、同資料館のセクションごとに進めており、順調に進展している。史料には、広場の計画、道路の配置計画、主要な施設の配置、小広場の分散配置などの考え方が読み取れるものもあれば、都市近郊の自然を描いたものや、土地の所有者を示したものなど、様々なものが含まれ、都市計画技術を同定するのに有効な史料ばかりではない。しかし、そうした史料にも、優先的に含められた情報の検討等により、都市図や計画図を伝達媒体として作成する上で、どういった情報が重視されていたのかを理解する情報源になると認識している。また、都市を描く際には、どのような範囲まで描いているのかといった情報も、都市の領域に対する認識を検討するにあたって極めて重要な情報を提供することがこれまでわかってきた。近代的な都市計画の視点との連続性や相違点を検討する上で、都市図の描き方は、都市の計画や構成を伝えるために必要な情報をどのように認識していたのかを掴み取るのに重要なマテリアルであり、そうした情報を都市図カルテの作成作業に含めるようにした。 また、こうした都市計画図を描くのは軍事技師である場合が多く、彼らが単なる都市図の描画者ではなく、計画技術をどのように修得していたのか、という新たな研究テーマを見出すに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、スペイン植民地時代の「都市計画」行為を示す都市計画図や都市整備図などのイメージ資料、ならびに、それらの具体的な計画行為を裏付ける文書や関連する法制度等のテキスト資料の分析を継続し、考察を重ねていく。 次年度は、インディアス古文書館のサント・ドミンゴ・セクションから都市図や都市整備計画図等のイメージ資料、および、法規範や制度、記録文書などのテキスト資料を活用し、「都市計画」的行為とみなせる要素を継続して検討していく。主要広場および道路と街区の均質なレイアウトパターンに集約されるスペイン植民都市の具体的な計画技術に着目し、実際の都市空間をどのように計画しようとしたのか、これまで明らかにされていない計画思想を具にみていく。 また、本研究を進める上で、技師や建築家への都市計画技術教育という研究課題が見出された。今後はこの点にも留意し、都市図を作成した技師の経歴や同時代の教育環境、さらには、同時代の都市計画行為の前提となる都市の形成・拡張過程に関する情報や先行研究を整理しつつ、本国の都市計画や都市整備に係る技師や建築家の技術および履歴もあわせて調査分析を進め、近世以降の植民地およびスペイン本国の都市計画技術の確立に着目していく。
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Causes of Carryover |
研究協力者との打合せのためスペイン渡航を当初計画していたが、先方の都合により実現しなかった。入手史料の分析経過により、先方との通信により、最低限の情報交換ができたため、研究の進捗には影響はなかった。
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