2018 Fiscal Year Research-status Report
身体活動促進のための近隣環境のWalk-Ability に関する研究
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16K06676
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
宮崎 慎也 福岡大学, 工学部, 助教 (70611995)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | WalkAbility / 近隣環境 / GIS / 歩行者ネットワーク / 身体活動量 |
Outline of Annual Research Achievements |
日常的な身体活動量の確保は生活習慣病などのリスク軽減に効果的であることは既に知られているが, 適度な身体活動量を維持するための条件として, 近隣環境のWalk-Ability が注目されている.本研究は, 身体活動量の観点から近隣環境のWalk-Ability を評価し, その改善手法を提案することを目的としている.具体的には(1) Walk-Ability-Index による近隣環境評価手法の開発, (2) 近隣環境評価のケーススタディー, (3) 近隣環境と近隣居住者の身体活動量との関係把握, (4) 近隣環境改善手法の提案, の4項目について研究を行う.最終的には近隣環境のWalk-Ability の高さが身体活動量を増加させる効果を検証し, 近隣環境改善策実施のプロセスを示すことが目的である. (1)(2)については昨年度までにおおよそ完了しているため,本年度は福岡市と長崎市のGISデータを利用して,近隣環境のWalk-Abilityを総合的評価しランク化付けを行った.この近隣環境のランク図を用いて(3)における近隣居住者の身体活動量を把握するためのアンケート調査を昨年度より引き続いて,福岡市内と長崎市内で実施した.このアンケートは,近隣環境と身体活動の関係を把握するためのもので,一日あたりの平均的な運動量を計測するためのものである.また,(4)の近隣環境改善手法の提案であるが,昨年度行った欧州の環境都市の街路網調査データの分析をすすめ,特に中心市街地のWalkAbilityの向上のための交通システムと街路網ネットワークの関係を解明しWalkAbilityの高い歩き易い空間モデルの提案に結びつける.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,都市のWalkAbilityを評価する指標を開発し,この評価と近隣居住者の身体活動量の間の関係を把握することである.また,近隣環境改善のため,都市のWalkAbilityを向上させるための街路のあり方について提案することを目標としている.この3つの目標に対して,本年度実施した研究内容を以下に示す. (1)WalkAbilityを評価する指標の開発:GISデータを用いた評価手法の開発を行っている.具体的には,道路の線密度,交差点密度,鉄道駅からの距離,バス停からの距離,建物利用の多様性,などをランク化し,これらを総合的に考慮してWalkAbilityを評価する.具体的には福岡市と長崎市のデータを用いて,100mメッシュ単位で近隣のWalkAbilityの評価を行った.また,この結果を可視化して,グラフィカルに把握できるようにした. (2) 近隣居住者の身体活動量調査:福岡市と長崎市でGISデータを用いたWalkAbilityの評価をもとに,評価の高い地域と低い地域の2群でアンケート調査を実施した.アンケートは国際標準化身体活動質問票を用いたものであるが,主観的な近隣のWalkAbilityの評価を把握するための質問項目も加えている.返信のあったアンケートの回答者の属性情報や居住地,身体活動量のデータをGISによるWalkAbilityの評価マップとマッチングし,その関係を分析した. (3)都市のWalkAbilityを向上させるための街路のあり方:欧州の環境都市の歩行環境の調査データをもとに,道路の線密度,交差点密度,など定量的な分析を行っている.これらを今後,日本の事例と比較しながら,歩行者ネットワークと交通システムの関係に注目して検証していく.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下のように研究をすすめる. (1) WalkAbilityを評価する指標の開発:GISデータによる近隣評価とアンケート調査結果のマッチングを行い,主観的なWalkAbilityの評価と客観的な評価との関係を把握し,差異がある場合はその原因を解明する.これらの分析をもとに,WalkAbilityの評価指標が妥当であったかを検証し,フィードバックによって評価指標の改善を試みる. (2)近隣居住者の身体活動量調査:福岡市と長崎市の身体活動量アンケート調査の結果と,GISデータによるWalkAbility評価の関係を把握し,差異がある場合はその原因を解明する.具体的には,身体活動量アンケートによる主観的な近隣環境の評価と,GISによる客観的な近隣環境評価の関係の他,身体活動量とアンケートによる主観的な近隣環境の関係,身体活動量とGISによる客観的な近隣環境の関係,の3点について分析をすすめる. (3) 都市のWalkAbilityを向上させるための街路のあり方:欧州の環境都市の追加調査を行う.調査対象は,トランジットモールに代表されるような,中心市街地の歩行環境整備に力をいれている都市を対象とする.特に歩行者ネットワークと交通システムの接続性に着目し,WalkAbilityが高く,歩きやすい街路網のあり方を分析していく.
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Causes of Carryover |
H30年度冬に予定していた欧州調査を,H31年度夏に実施するよう予定変更したため,また,論文掲載の投稿費用として予定したものが,掲載予定がH31年度となったため,当該助成金が生じた.したがって,当該助成金については,欧州調査と論文投稿費用として利用する予定である.
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Research Products
(4 results)