2018 Fiscal Year Research-status Report
古社寺保存法時代の特別保護建造物の修理における設計変更の概念の生成とその確立
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16K06689
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
三浦 要一 高知県立大学, 文化学部, 教授 (70305803)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 寺社建築 / 古社寺保存法 / 修理 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は古社寺保存法による設計変更後に修理が竣工し、建築の年代と形式が複合することになった特別保護建造物の当初形式を読み解く指標について検討をおこなった。 豊楽寺薬師堂は建立年代が仁平元年(1151)頃であり、明治修理の設計変更において近世の厨子が撤去され、須弥壇が改修されたことを明らかにした。その一方で、近世の向拝は、参拝者の便宜を図るという理由で撤去されておらず、小屋組はトラス構造に変更されていた。竹林寺本堂は室町後期(1467~1572)の建立であるが、設計変更によって移築されていた。近世の厨子と須弥壇は内陣におかれ、向拝が附加されたままであった。小屋材は遺構調査から墨書が確認され、明治修理において取り替えられていたことが判明したが、形式は和小屋である。明治修理による設計変更と維持修理から、建築の年代と形式が複合したものになっていた。新出資料の図面等と設計変更願が発見できたことにより、修理が竣工した建築のなかにも手がかりを見出し、修理内容を検証することにより、当初形式に復原されていないことを明らかにすることができた。 豊楽寺薬師堂と竹林寺本堂の事例に、常楽寺本堂、榮山寺八角堂、圓成寺楼門、天恩寺仏殿、唐招提寺金堂を加え、古社寺保存法時代に修理が竣工した特別保護建造物は、建設の年代と形式が複合したものと捉え、設計変更に焦点をあわせ、それ以外の変更と現状維持を把握し、それらを読み解く指標の確立を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古社寺保存法による設計変更は、これまで等閑に付されてきたが、これに焦点をあわせ、それを読み解く指標を確立することで、修理資料を用いた建築史研究の有用性を提示できるようになった。近年の文化財建造物には、年輪年代測定法と放射性炭素年代測定法のふたつの科学的調査が実施されるようになっている。こうした調査に比べて、本研究はひろく知られていない。文化財建造物に指定された寺社は、明治中期から昭和初期に作成された「修理設計書」「設計変更」「精算書」が貴重な建築史研究の資料であることを認識しているとは言い難いところがある。本研究の成果を社会・国民に発信するために学術論文として公開したい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長が承認されており、補助事業の目的をより精緻に達成し、学術論文として投稿する。
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Causes of Carryover |
次年度は科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長により、使用額が生じるようにした。
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Research Products
(2 results)