2016 Fiscal Year Research-status Report
戦前の開墾事業における住宅改善の実像ー農村指導者教育と連動した改善手法と理念
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16K06693
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小澤 朝江 東海大学, 工学部, 教授 (70212587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 城治 郡山女子大学, 家政学部, 講師 (70734458)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 開墾地 / 移住家屋 / 住宅改善 / 開墾地移住奨励 / 農林省 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦前の開墾事業および農村指導者教育における住宅改善の取組みとその手法・理念を検討するもので、1919年の開墾助成法施行から1941年の農地開発営団設立までを主対象とする。本年度は、以下の3項目について調査・分析を行った。 (1)東北地方の開墾地移住家屋の調査 ①山形県営萩野開墾地(1928-32)、②岩手県営岩崎開墾地(1932-38)、③同六原模範農村部(1935-42)、④福島県矢吹原開墾地(1936-46)、⑤宮城県営広渕沼開墾地(1925-28)を対象に調査した。①は、1年度と2年度以降で基準平面が異なり、前者は山形県最上地方の民家、後者は農林省が1930年に刊行した「開墾地移住家屋及仝附属家設計図例」に類似することから、農林省の指導で変更したと推測できる。山形県は、県立国民高等学校にはこの2案に類似した「標準農家」を建設し、修錬生の居住や一般公開により農村住宅改善を啓発した。萩野開墾地には7棟の移住家屋の現存が確認でき、3棟の実測調査を実施した。②は食堂・浴場・作業所等の共同施設を有し、岩手県は移住家屋の改善のため、耕作形態による地域区分に合わせた「模範農家」4案を1936年に六原青年道場内に建設、1937年以降の入植地区と③でうち1案を基準型として採用した。④は、東北地方集団農耕地開発事業による1・2期の移住家屋は、同事業の基本平面を一部変更して採用したが、国営事業の3・4期は配給材料による自力建設という劣悪な家屋だった。 (2)長野県常盤村中部耕地整理組合文書の調査 長野県立歴史館所蔵清水家文書中に、常盤村中部耕地整理組合(長野県大町市)の1923~34年の開墾地移住奨励申請関連書類一式を発見し、農林省の開墾地移住奨励交付者65戸中57戸の申請概要と、53戸の移住家屋の平面、取下・不合格の書類等により、運用実態を具体的に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
農林省が1920年から実施した開墾地移住奨励制度については、農林省・各県では申請書類が保存されていないが、先述の通り、長野県・常盤村耕地整理組合の9割近い交付者の申請書類一式の現存が確認でき、同制度の具体的な運用実態と、建設された開墾地移住家屋の平面の分析が可能となった。 さらに、茨城県立新興農場についても同種の史料の現存を確認しており、山形県・岩手県・福島県での県営事業との比較も可能となった。調査は極めて順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)常盤村中部耕地整理組合文書の分析の継続、および同地域で現存を確認した移住家屋の実測・ヒアリング調査を実施して、開墾地移住奨励制度の住宅改善への効果を検証する。 (2)茨城県立歴史館所蔵の茨城県立新興農場関連史料の調査、および現地調査を実施し、開墾地移住家屋および共同施設の実態を明らかにする。 (3)富山県立農民道場内に建設されたモデル住宅について、形態・平面と用法を検討し、先述の山形県・岩手県の農村指導者施設の「模範農家」等と合わせ、農村住宅改善の手法を検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度の交付額と実支出額の差額は約30,000円で、これは実地調査時の調査員が少なくて済んだことにより生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は実地調査を年度早期から予定しており調査員謝金に充当する。
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