2017 Fiscal Year Research-status Report
戦前の開墾事業における住宅改善の実像ー農村指導者教育と連動した改善手法と理念
Project/Area Number |
16K06693
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小澤 朝江 東海大学, 工学部, 教授 (70212587)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 城治 郡山女子大学, 家政学部, 講師 (70734458)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 開墾地移住奨励 / 移住家屋 / 常盤村中部耕地整理組合 / 新興農場 / 今和次郎 / 農村住宅改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、主に以下の3項目の調査・分析を行った。 (1) 常盤村中部耕地整理組合(長野県大町市)の1923~34年の開墾地移住奨励申請関連書類(長野県立歴史館所蔵清水家文書)を対象に、移住奨励制度の運用実態を検討し、現存する申請家屋1戸の実測調査を実施した。開墾地移住奨励制度は、1921年の創設後、1926年・1929年の改正により、移住家屋の耐久性の確保から、質の向上に主眼が移った。長野県では、移住家屋の平面図や仕様書・予算書の提出と竣工検査を経て補助を行い、規模・仕様・平面に対し指導が行われた。常盤村中部耕地整理組合の移住家屋は、大正期には古家の転用や建坪20坪未満が4割以上で、建築費も1000円未満が7割を越えたが、1927年以降古家の利用が激減、建坪20坪代、建築費1000~1500円に均一化し、平面も三間取広間型・妻入型など在来民家に近い平面から四間取型に定型化した。 (2) 茨城県・新興農場について、『新興農場関係綴』(茨城県立歴史館蔵)を調査し、茨城県農業技師・深作雄太郎の日記と合わせて移住家屋の設計・建設経緯を検討した。新興農場は1932年に創設、1934年に移住家屋の設計を今和次郎に依頼し、翌年28戸を建設した。この移住家屋は、平面図および「新興農場従業員住宅建築案」と題する説明書によると、今和次郎が1927年に発表した『農家及農業建築物設計参考圖表』の参考図が原案とみられ、土間の食卓・椅子を備え、炊事場と分離して応接や農業事務等の用途を兼ねる点を特徴とした。 (3) 開墾地移住奨励による共同建造物の実態を調査した。開墾地移住奨励では、1926年改定以降、公会堂・作業場・社寺など共同施設に対象が拡大、1939年までに24県で146棟が建設され、宮崎県49棟、熊本県17棟が特に多かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
農林省が1920年から実施した開墾地移住奨励制度について、長野県・常盤村耕地整理組合史料により運用実態と移住家屋への影響を明らかにできた。また、茨城県新興農場については、農村住宅改善に勢力的に取り組んだ今和次郎の関与が明らかになった。開墾地移住奨励の開墾地単位の史料については、小束野村耕地整理組合(兵庫県)、昭和村県営南新地(熊本県)等でも現存を確認しており、今後複数の開墾地や県での比較が可能となる。研究は順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)茨城県新興農場に現存する開墾地移住家屋および公会堂の実地調査を行い、特徴を明らかにする。 (2)2017年度に史料調査を行った富山県立農民道場(1934年東砺波郡北般若村で創設、1938年上新川郡福沢村に移転)の「模範農家」の検討を継続し、山形県・岩手県・秋田県の修錬農場のモデル住宅と合わせて、開墾地移住家屋の改善手法を検討する。 (3) 小束野村耕地整理組合(兵庫県)、昭和村県営南新地(熊本県)等の開墾地移住奨励関係史料を調査・分析し、他県の実態と比較して、移住奨励制度の住宅改善への効果を検証する。
|
Causes of Carryover |
当該年度の交付額と実支出額の差額は約11万円で、史料複写の外注費および実地調査時の調査員謝金が少なくて済んだことによる。 2018年度は実地調査を年度早期から予定しており、支出差額は調査および図面作成の謝金に充当する。
|
Research Products
(3 results)