2019 Fiscal Year Annual Research Report
A study on the theory and practice of Flexible Structure Advocated by Kenzaburo Mashima in Navy Facilities
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16K06695
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
水野 僚子 日本大学, 生産工学部, 助教 (80736744)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 建築技術史 / 真島健三郎 / 柔構造 / 耐震 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では、真島健三郎が海軍建築局長時代の庁舎として実測調査および振動測定を行った旧海軍技術研究所科学及電気研究場について、解体現場での調査を行い、その構造を理解することによって、真島の柔構造理論がどのように展開していたのかを分析した。この庁舎は内外壁に鉄筋煉瓦を使用しており、一部の煉瓦に「特許」の刻印が見られたことから、金森式鉄筋煉瓦であると考えられる。柱梁はコンクリートで被覆された組立材で、柱梁に使われている鉄筋量は現在の鉄骨鉄筋コンクリート構造に比べて少なく、コンクリートの剥落防止のための鉄筋と推察される。梁は箱型の組立梁で、居室部分は梁せい500mmで矩形架構を構成し、それらを廊下部分の梁せい300mmでつなぎ合わせていた。柱梁接合部は、梁は柱に貫通しておらず、梁の山形鋼は柱に鋼板を介してリベット接合されていた。このような接合部では、梁鉄骨による曲げモーメントの柱への伝達は難しいと考えられる。地下の基礎部はフーチング形状で、この部分は解体されなかったため、内部については判明しなかったが、同時期に建てられた物理化学及材料研究室の基礎遺構から、ベースプレート形式の露出型柱脚であり、鉄骨柱脚は真島の提案したピン形式を想定していると推定される。 以前行った振動測定とモデル解析では常時荷重や小地震時には柱梁の鉄骨コンクリートや少量の鉄筋が有効に働き剛節架構として挙動すると考えられた。しかし、解体時調査によって、柱梁部材の鉄筋量が少なく、梁の内部組立鉄骨の軸方向材は直接柱に接合されていないことから、大地震時には梁端部がピン接合として挙動することを意図していた設計されたものと推察される。この設計意図は真島の考案した柔構造理論が基本思想となり形になったものと考えられ、その理論をもとに実践された構造を理解することができた。
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Research Products
(3 results)