2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K06696
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
是澤 紀子 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (40431978)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神社建築 / 中近世 / 歴史的環境 / 境内 / 神体山 / 樹木景観 / 絵図 / 活断層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中近世の神社を対象として、神社建築と境内を含む山林が一体となって形成してきた歴史的環境としての神社の保存・再生について建築史学的に解明することである。神社建築の建立と修復の履歴を取り上げて、維持保全の実態を解明し、神社境内の整備や、周囲を取り巻く山林とがどのように相互に関連してきたかを探ることによって、総体としての神社におけるライフサイクルの特質を明らかにする。 今年度は、とくに長野県の諏訪大社を取り上げ、本殿を持たず背後に聳える守屋山を神体山として遥拝する形式をもつ神社について、史資料及び現存植生調査から樹木景観の変遷とその特質を明らかにした。境内林では、絵図史料の描写から、マツ系の混じる植生からスギ・ヒノキ系が優占する植生へと変化したことが見出せた。さらに、境内の神社建築の配置構成とその変遷と比較してみると、樹木景観の変遷には信仰軸の変遷との相関関係があると考えられることを指摘した。以上のほか、熊本地震を受けて被災した神社が多くあった実態を受けて、歴史的環境として現地調査を実施した結果、神社の立地分布と活断層との相関関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査の機会が得られた諏訪大社の調査を実施することができ、その成果を論文としてまとめることができたので、2017年度に発表を予定している。しかしながら、当初予定していた畿内(おもに奈良・京都・滋賀・和歌山)からの対象の絞り込みと分析は十分できなかったことから、次年度以降に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、資料収集と現地調査対象の比較分析を行い、神社建築と神社を取り巻く山林における維持保全の特徴について、植生分析とともに進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、現地調査を行い対象を抽出するための史資料の収集と対象比較分析に遅れがあり、現地調査を伴う資料の収集と分析が十分に進まなかったことにより、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、史資料の収集と現地対象の比較分析を引き続き行い、現地調査を伴う資料の収集と分析を進め、中世後期から近世に本殿が建立された神社を主として現地調査を実施する予定である。対象の抽出にあたっては、本研究代表者がこれまでに全国の中世神社建築を対象に進めてきた「神社建築と信仰の景観に関する研究」(平成24~28年度科学研究費補助金若手研究)おいて、建築形態と細部装飾の発展に関して得られた成果をふまえて、神社境内や山林の変遷に関する史資料が得られる対象をさらに絞り込んで焦点をあてる。
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Research Products
(2 results)