2017 Fiscal Year Research-status Report
パリ外国宣教会がもたらした道具・技術に関する研究:宣教師による教会堂建設の再評価
Project/Area Number |
16K06698
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
山田 由香里 長崎総合科学大学, 工学部, 教授 (60454948)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 長崎の教会堂 / パリ外国宣教会 / 出津救助院 / ド・ロ神父 / 授産施設 / 韓屋教会 / 世界遺産 / 鉄川与助 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績は、以下の三点からなる。 第一に、昨年度、平成28年度に実施した長崎外海の出津救助院の所蔵するド・ロ神父がもたらした道具の実測調査データの整理を行った。道具には織物関係、食品加工製造関係、農具、宗教関係等、約1500点がある。収蔵の過程でバラバラになっていたが、復原が進んでいる。古いものは明治初期に遡り、フランスからもたらされた近代技術の一端が窺える。 第二に、パリ外国宣教会の宣教師で、ド・ロ神父と同様に道具や技術をもたらしたオズーフ神父(東京、1829-1906)やガルニエ神父(天草、1860-1941)の事績をたどる現地調査を行った。プチジャン神父(長崎、1829-1884)が設立したシュファイユの幼きイエズス修道会(兵庫・仁川)の所蔵資料の調査も行った。調査の主眼は、宣教師がもたらした道具・技術が今も残るかという点にあったが、残念ながら戦災・震災を経て、残存状況は良好でなかった。よって、長崎外海に残るド・ロ神父のもたらした道具・技術は、一層貴重で重要なものである。また、長崎県内の五島奥浦、上五島の鯛の浦、平戸の田平にも、外海と同様の授産施設が充実したことが資料から明らかになった。教会堂を建設した鉄川与助は、これら授産施設の建設にも関わった。 第三に、韓国民家の韓屋を利用した教会堂に知見の深い金龍河博士(元・仁川開発研究院)と冨井正憲博士(韓国ソウル漢陽大学客員教授)と、研究交流の機会を持った。当初の計画になかった項目だが、貴重な機会であり、韓日のキリスト教会堂の比較研究と歴史背景を探った。韓国の19世紀の道具・技術の伝播窓口は仁川港である。仁川港は1883~1910年に日本租界があった場所であり、旧十八銀行仁川支店、旧第一銀行仁川支店などが保存されて残る。長崎との結び付きは強く、長崎から仁川に渡った外国人宣教師もいた。現地で情報収集に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度に予定していた研究計画は、①平成28 年度に調査した道具の整理と復原、②データベースの作成、③パリ外国宣教会の宣教師でド・ロ神父と同様に道具をもたらした神父について事跡と道具の類例調査、である。 このうち、①と③については順調に進展した。一方で②は、やや遅れている。これは、調査した道具の総点数が当初より多く、整理と復原に時間が割かれたためである。 よって、全体にはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究計画は、①平成28・29 年度に明らかにしたことの総合的検討、②データベースの作成、③パリ外国宣教会のわが国における教会堂建設と授産事業を実証的に再検討し歴史的価値の再評価、④目録冊子を作成し普及に務める、である。 いずれも端緒についており、計画通り進める予定である。 特に③の、授産事業の実証的再検討は、長崎県内の五島奥浦、上五島の鯛の浦、平戸の田平にも外海と同様の授産施設が充実したことが明らかになったことをふまえ、現地調査を行い、比較検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、出張の際に低価格航空券等を使用したため予定よりも旅費が安価になった点、データベース作成が計画通りに進まなかったためにアルバイトを頼むことができなかった点にある。 平成30年度は、データベース作成、冊子の作成などを予定している。平成30年度請求分と合わせ、計画通り使用する予定である。
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