2016 Fiscal Year Research-status Report
六方晶金属における塑性異方性改善のための合金設計手法の開発
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16K06714
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
都留 智仁 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (80455295)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 塑性異方性 / 六方晶合金 / 転位芯構造解析 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
マグネシウム(Mg)などの六方晶合金は,塑性変形の異方性のため低温~室温で延性・加工性に乏しく,構造材料として本質的な欠点を有している.近年,少量の添加で延性を劇的に改善する元素が確認され,合金開発による実用化が期待されている.しかし,合金化と機械特性の関係は古くから固溶強化が知られるのみで,降伏後の塑性変形や延性を関連づける理論や機構は知られていない.そこで本研究では,周期転位の場を考慮した電子構造解析に基づく塑性変形の評価法を構築し,塑性異方性を改善する機構を解明することを目的とする. 第一原理計算では数百原子程度で周期境界上の転位を表現するため,転位の弾性場は重なりが全エネルギーの大きな割合を占め,わずかな位置の変化で系のエネルギーは大きく変化する.そのため,溶質原子と転位運動の相互作用を考えた場合,エネルギーの電子結合の寄与を正当に評価することは困難である.そこで,六方晶の各すべり面に対して,周期系の転位が生成する弾性場を逆格子空間から数値的に求める手法を構築し,弾性エネルギーの寄与を正確に評価した.さらに,弾性論を用いた転位の変位場を原子モデルに適用することで,周期系の転位の弾性場を満たした原子モデルを構築し,第一原理計算の初期構造モデルとして用いた.この周期系の転位を有する原子モデルを用いて,合金元素が転位構造に及ぼす影響を第一原理計算により評価した結果,イットリウムなどの一部の元素の添加によって柱面転位のPeierls 応力の低下,底面の拡張転位の収縮による非底面転位の活性化が生じ,塑性異方性が低減されることが示された.これらの元素は体積ひずみによる弾性応力場や転位の張出しなどのこれまでによく知られた力学的相互作用だけでなく,電子間の相互作用に大きな影響を及ぼし,転位芯構造を変化させうることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一原理計算による転位芯構造解析において,弾性論を利用したモデルの作成と転位が移動した際に生じる弾性エネルギーの変化を定量的に評価する手法を当初の予定通り構築することに成功した.第一原理計算についても申請者が所属する原子力機構のスーパーコンピューターシステムを有効に活用し,Mg合金に添加される元素を全て検討に加え合金元素が転位構造に及ぼす影響を評価している. さらに,連携研究者と協力して合金元素の影響として転位芯構造解析に加えて界面強度や破壊への影響を評価する手法の検討に着手した.2元系合金を用いた実験観察から合金元素の影響を明確に同定するとともに,計算科学によって合金元素の界面への偏析と破壊に対する凝集エネルギー変化の定量的な評価を行っている.また,転位芯構造解析に加え,連携研究者とともにインデンテーション下の転位組織について検討を行い,押込み面によって異なるすべり系が作動し,それによって異なるpop-in挙動が生じることを明らかにした.以上の様に,実験と計算の連携による成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
六方晶合金の転位運動を特徴付けるc/a比に着目して,Mgの他にc/aが大きく異なるTi,ZrやReなどの他の六方晶合金を対象として,それぞれの機械特性や転位運動を調査する.現在,TiとReに関してカリフォルニア大学バークレー校と共同研究を行っており,Tiに関してその場観察圧縮試験から転位構造と酸素による特異な強化機構が明らかにされている.また,転位構造解析の第一原理計算に先駆的な成果を挙げているリヨン大学と議論を深め,TiとZrの転位構造と変形特性について検討を開始した.これらの実験事実と本研究課題の転位構造解析を駆使して,Mgだけでなく六方晶合金特有の変形特性を体系的に整理することを検討している.
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Causes of Carryover |
解説記事の投稿を依頼に従ってカラー原稿としたため高額の投稿料が発生し、プレ処理解析用の計算機購入を中止したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度購入予定の計算サーバーのスペックを上げるための費用として次年度使用額を加算して使用する。
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Research Products
(18 results)