2017 Fiscal Year Research-status Report
光触媒層状化合物-遷移金属カチオンの複合化と光照射によるアンモニア類の吸脱着制御
Project/Area Number |
16K06720
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
武井 貴弘 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (50324182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊田 伸弘 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90161702)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 層状化合物 / アンモニア / 吸脱着 / 光応答性 / アンミン錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンモニアは化学式NH3であらわされるとおり、分子内に炭素を持たないために燃焼してもCO2を生成しない、極めてクリーンなエネルギーである。またアンモニアは、熱力学的にはおおよそ200℃以上で分解してN2とH2が生成する自由エネルギー変化が負となるため、理論的には比較的低温度でH2を取り出すことが可能であることから、水素エネルギーキャリア物質としても注目されている。しかしながら一方で、アンモニアは極めて大きな刺激臭を持ち、劇物指定されていることから、輸送に関しては注意深く取り扱う必要がある。特にエネルギーキャリア物質として利用する場合は、出し入れする頻度が多くなることや、あるいはモバイル用途で利用することを考えると、安全な可搬性は非常に重要である。そこで本研究では、吸脱着で一般的な圧力制御ではなく、光照射やあるいは加熱等の比較的安全な方法で、アンモニア供給および放出を可能とする材料の合成を目指している。 本年度は層状チタン酸塩のうち、カチオン交換可能な物質や、あるいは光触媒活性が高い酸化チタンを用いてアンモニアの吸脱着を検討した。その結果、層状チタン酸に遷移金属カチオンを導入することで、層間のカチオンがアンミン錯体を形成して、加熱によってアンモニアと水とを完全に分離しうる材料の合成が可能であることが分かった。また、酸化チタンに遷移金属を複合化することで、アンモニア吸脱着に関して光応答性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、カチオン交換可能な層状チタン酸塩について、H、Ca、Mn、Co、Ni、Cu、Agを導入して吸着試料を作製した。その結果、アンモニア吸着量は最大で8.2mass%程度であり、液相でアンモニアを吸着する場合と比較して気相で吸着するほうが2倍程度多いことが分かった。一方でH導入試料では液相、気相ともに吸着量に変化がなかったことから、層間に導入したカチオンにアンモニアが配位していることが確認された。また、TG-MASSで厳密に分析したところ、加熱によって水がおよそ80℃程度で、アンモニアはおよそ230℃で脱離された。一般にアンモニアと水は完全に相溶性があり、分離することは難しい。アンモニア水は可搬性が高く一般の試薬は約25%程度での水溶液が出回っているが、この水溶液から純粋なアンモニアを取り出すのは困難である。本研究での試料では、80℃と230℃で水とアンモニアをほぼ完全に分離できると予想され、分離剤として非常に興味深いと考えられる。 また、吸脱着の光応答性については、上記の層状チタン酸塩に加え、酸化チタンにAgを複合化した物質でも行った。特に酸化チタンにAgを複合化した系について、アンモニア水溶液中で365nmおよび500nmの光を照射しながらpH変化およびアンモニア濃度変化を検討したところ、365nmで緩やかにpHが上昇し、500nmで緩やかに減少した。光応答性についてはさらなる検討が必要であるが、アンモニア吸脱着に関する光応答性が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
層状化合物については現状ではあまり光応答性が確認されていない。それは光触媒活性に関与するバンドギャップが十分な条件を満たしていない可能性が高い。特に遷移金属イオンのアンミン錯体の酸化還元電位を伝導帯下端が下回るとアンモニア脱離反応が確認できないと考えられるため、光触媒のバンド構造を制御することが必要であると考えられる。そこでチタン酸のみならずさらに伝導帯下端のポテンシャルが高いタンタルやニオブ酸塩などについても検討したい。また、ホールを消費する犠牲剤が現状必要であるため、固体で酸化還元可能なCeやNi等の導入も検討する予定である。
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Research Products
(6 results)