2016 Fiscal Year Research-status Report
全固体電池材料の無粒界単結晶薄膜作製によるLiイオン伝導研究
Project/Area Number |
16K06737
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大西 剛 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主幹研究員 (80345230)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 全固体二次電池 / 薄膜 / エピタキシャル |
Outline of Annual Research Achievements |
全固体Liイオン電池の超高出力化を最終目標として、単一薄膜中に粒界のないバルク単結晶品質の一枚板の電池材料薄膜を形成する。これまで、活物質や固体電解質などの個々の電池材料の高品質薄膜化を主眼に研究を遂行してきたが、異種材料同士のヘテロエピタキシャル界面を形成すると、上部に形成されるエピタキシャル薄膜が下地の影響を強く受け、それが原因で上部の電池材料薄膜そのものの性質がかき消される可能性が明らかとなり、ヘテロ界面の諸現象を解明するにはホモ界面の問題解決が前提であることがわかった。活物質は全固体電池の出力を律速しうるため、まずはLiCoO2の無粒界単結晶薄膜化に取り組み、層状岩塩構造をもつ2次元活物質の潜在能力を見極めるとともに、その結果を踏まえて高出力モデル電池を形成する。
初年度は、計画していた電子伝導性SrRuO3緩衝層を用いず、集電体単結晶基板Nb:SrTiO3単結晶の微傾斜面を用いた。既に面内[011]方向に傾斜した(100)面上にLiCoO2薄膜を成長させることで(104)配向LiCoO2薄膜のc軸が1方向にそろうが、格子不整合により柱状成長し一枚板の単結晶とはならず、電池動作も微傾斜していない基板を用いたときと変わらないことを報告済みだが、[011]方向傾斜(111)面上に成長したc軸配向LiCoO2薄膜を用いた薄膜電池の内部抵抗が傾斜していない基板の場合と比べ非常に高いことがわかった。LiCoO2薄膜表面には傾斜方向に垂直なステップ&テラスが観測されることから、ステップフロー成長していることが示唆され、柱状成長していない可能性がある。LiCoO2は層状構造で、その晶癖からab面方向の成長が速いためステップフローにより柱状成長せずに1枚板の単結晶になっている可能性がある。一枚板のLiCoO2単結晶薄膜でc軸方向にはLiイオンが流れないことが証明できそうである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたSrRuO3緩衝層を用いずにNb:SrTiO3(100)面微傾斜基板を用いることで一枚板の単結晶LiCoO2薄膜ができる可能性を見いたした。今後他の配向薄膜のためにSrRuO3緩衝層が必要になるが、まずはc軸配向単結晶薄膜ができていることの確認とその特性の詳細な評価を行う。高出力化の観点では逆方向であるが、一枚板の単結晶薄膜が得られたこと、そのc軸方向にはLiが動かないことがわかれば学術的にも重要な知見が得られたことになる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きNb:SrTiO3(100)面微傾斜基板の傾斜角、傾斜方位依存性について明らかにするとともに、真に1枚板となっているかの確認作業を行う。次に、SrRuO3緩衝層を用いて、(110)配向、もしくは(104)配向のLiCoO2薄膜で1枚板のLiCoO2薄膜の作製を試みる。
|