2016 Fiscal Year Research-status Report
高表面摩擦性を実現するナノ多孔を有する超極細複合繊維構造の創製
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16K06740
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
伊藤 浩志 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (20259807)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノロッド構造 / ナノインプリント / 極細複合繊維 / ナノ多孔構造 / ポリマーブレンド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高い表面摩擦特性を示す新たなナノスケールの繊維構造を作製することを目的とした。ここでは,ナノ多孔構造を有するアルミニウム自己組織化膜(AAO)を用いて,非晶性ポリマーのポリスチレン(PS)と結晶性ポリマーのポリビニルアルコール(PVA)のブレンド材料を試料に熱ナノインプリントによりナノロッド構造を作製した。 PSマトリックス中の2相構造のPVAミクロおよびナノスケールのドメインサイズを有するPS / PVAブレンドは,高剪断加工プロセスによって,まずはナノドメイン構造を有するポリマーブレンドフィルムを得た。その後,このブレンドフィルムを用いてナノロッド構造を熱インプリントにより作製し,PVAの温水選択的除去を用いてPS多孔ナノロッド構造が得られた。ここでは,得られた多孔質構造の形成機構に及ぼすPVAミクロおよびナノドメインの影響を明らかにすることに主眼を置き,さらに得られた構造物の疎水性および摩擦特性を報告した。PS / PVA(90:10w / w%)もしくはPS / PVA(70:30w / w%)ブレンドフィルム前駆体を用いて,水選択性除去後のPSナノロッド表面上に得られたナノ多孔質構造の形態や構造を測定した結果,PS / PVA(90:10w / w%)の組合せで,ナノロッドの直径を50 nmまで制御可能であった。さらに最適なインプリント条件を適用することによって,ロッド長を増加させることができ,その最大アスペクト比(長さ/直径)は約1,000であった。また,ガラス転移温度や分子配向について調べた結果,ナノ構造によってもバルク構造のそれらの物性と相違ないことも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
既に目標である50ナノメートル直径のロッド構造,極細繊維構造を得ることが出来た。さらに,ポリマーブレンドの相分離法によるナノスケールの表面多孔をこれらのロッド,極細繊維表面に形成することを実現したためである。今後は,これらの高次構造や表面摩擦係数を詳細に調べる。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度以降では、前年度の実績をもとに自己組織化テンプレートの作製、結晶性高分子材料の精密インプリント成形による繊維形成機構の解明、得られたナノロッドおよびナノ繊維の物性評価に主眼を置き、以下に示す計画で進める。 ナノロッドおよびナノ繊維材料として、多くの知見を有する結晶性高分子材料のポリプロピレンを用いる。前年度同様に、溶融粘度、熱特性などを現有設備によって測定する。さらに現有設備である真空熱ナノインプリントを用いて繊維構造の作製実験を行う。金型温度、プレス時間、圧力などの成形条件を変化させて実験を行う。さらに、ポリプロピレンを試料に、超臨界状態の二酸化炭素もしくは窒素などの不活性ガスを含浸させたフィルムを用いて、圧力・温度を制御しながら熱インプリントを行い、テンプレート中のナノ繊維に多孔を形成させる。時間を変化させながら、繊維長を実験的に観察するとともに、得られた繊維やフィルム表面上の繊維形成物の連続階層構造を解析する。得られた繊維フィルムの熱特性や配向状態などを詳細に調べる。 次に,得られたナノロッドおよび繊維,またフィルム表面上の繊維形成物の物性評価を試みる。繊維の摩擦特性や力学特性を詳細に調べる。摩擦特性の評価は単純ではないため、現有設備の動摩擦試験機の治具を改造するともに、ナノインデンターを用いて表面硬度や弾性率の測定、顕微ラマン分光法、また外部機関が所有する電子顕微鏡内部での力学特性評価装置などを利用して、物性の評価を行う。当初予定通りの物性評価が進まない場合、間接的な評価として、微小粒子の付着力試験や帯電特性などを間接的なデータを取得し、摩擦特性との因果関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度で購入予定であった実験備品の一部の納期が遅れた。本装置はテーラーメイドの装置備品であり,設計から見直したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これらの備品装置を年度の早い時期に購入し,整備して実験をさらに進める予定である。また,一部は消耗品,旅費等としても利用する予定である。
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Research Products
(6 results)