2017 Fiscal Year Research-status Report
熱可塑性炭素繊維強化複合材料CFRTPのIH加熱による界面修復技術の開発
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16K06743
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
三宅 卓志 岐阜大学, 工学部, 教授 (70503275)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 炭素繊維強化複合材料 / 熱可塑性樹脂マトリックス / 界面剥離 / 界面修復 / 顕微ラマン分光法 / 高周波電磁誘導加熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素繊維の急速加熱による熱可塑性炭素繊維強化複合材料の界面修復においては,界面修復後の再溶着範囲および再溶着強度は,界面近傍の樹脂の加熱状態により影響され変化すると予想されるから,炭素繊維の加熱状態,すなわち昇温速度と最高温度を変化させた場合の界面の再溶着範囲と強度を変化を,炭素繊維1本を埋め込んだモデル試験片を用いて評価した.炭素繊維の加熱は,ライン集光型のハロゲンランプを用い,照射エネルギおよび照射時間を変化させることにより昇温速度と到達温度を変化させた.再溶着範囲は,モデル試験片に引張負荷を加えながら,繊維応力分布を顕微ラマン分光法を用いて1μm空間分解能で測定し,せん断応力が発生しない界面剥離領域を求めることにより特定した.同時に,引張荷重を漸増させていくことで,界面剥離が再発生する溶着強度も評価した. その結果,100Nの引張負荷を加えて予め界面剥離を発生させたポリプロピレンマトリックス試験片に対し,ハロゲンランプ電圧160Vで4sec間および200Vで2sec間照射加熱した場合,200V, 2sec照射したものでは100N負荷時に加熱前とほぼ同じ端部から約400μm領域に界面剥離が発生したのに対し,160V,4secのものはより広い端部から約500μm範囲で界面剥離が発生した.さらなる詳細な検討が必要であるが,加熱速度と到達温度により再溶着状態が変化し,昇温速度が速いほうが界面修復に有効であることを明らかにした. この方法の実用のため,加熱方法をMHz帯の高周波電磁誘導加熱とする予定であるから,MHz-高周波による炭素繊維の加熱挙動の詳細について明らかにしていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マトリックス樹脂と炭素繊維の吸収率の差を用いることにより,炭素繊維単繊維1本を埋め込んだモデル試験片中の炭素繊維だけを加熱することが可能であり,これにより界面修復できることが繊維応力分布から確認できている.さらに,その修復された界面の再溶着強度が,炭素繊維の加熱状態により変化することを顕微ラマン分光法を用いて定量的に明らかにできた.これは当初想定したところの成果であり,計画どおりである.しかし,引張負荷をかけた状態で繊維応力分布を顕微ラマン分光装置で測定する際,試験片に用いているポリプロピレンがクリープ変形し,繊維応力が変化するため,データの変動が大きくなっており,その対策のための試験片改良が必要となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
学術的な観点からは,修復のメカニズムの詳細をさらに検討する.一方,実用化の観点からは,積層板や射出成形体への適用のため高周波誘導加熱による加熱を検討する.修復のメカニズムの検討は,試片の表面温度分布から炭素繊維の温度を見積もる方法について検討を行うとともに,繊維の抵抗変化による温度測定の可能性についても検討を行う.高周波誘導加熱については,より高速に加熱可能なようコイル形状やコア材による磁界制御の検討を行う. また,界面修復の進行を,繊維から表面への熱伝導に着目してモニタリングする方法について検討を行う.熱伝導の変化と曲げ弾性率の変化の対応を調べ,熱伝導変化に起因する表面温度の上昇挙動の変化から界面溶着状態を推測できるかどうか検討を行う.
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Causes of Carryover |
(理由) 炭素繊維加熱用ハロゲンランプは,反射集光板が高温となるため水冷するものが主であり,水冷式を検討していたが,空冷式のものが見つかり,安価であったため.また,試験片を工夫し,マトリックスを高価なUV硬化型樹脂から汎用のポリプロピレンとしたことにより原材料費が節約できたため. (使用計画) 修復実験に用いるCFRTP積層板や一方向テープなどの原材料の購入,ラマン分光装置の調整および複合材料の国際会議参加の旅費にあてる予定である.
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Research Products
(1 results)