2018 Fiscal Year Research-status Report
界面に沿って伝搬する超音波を用いた接着界面の性状評価
Project/Area Number |
16K06749
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
長 秀雄 青山学院大学, 理工学部, 教授 (60296382)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 接着性状 / ラム波 / 非破壊評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子接着剤によって接合した2枚の板中を伝搬するラム波を用いた接着性状とラム波の伝搬挙動の関係について評価を行った.接着性状は,接着界面での波動の振る舞いに影響を与えることから本研究では界面での波動の伝搬挙動を直接計測するためにガラスもしくはアクリル板を用い,レーザドップラー振動計のプローブ光を界面に直接照射することで界面での振動の計測を可能とした.その際に2枚のガラス板を接着した場合,試験片の構成は上からガラス/上側界面/接着剤/下側界面/ガラスとなり,同一位置における上側界面および下側界面は別々に計測することで伝搬モードの同定を行ったところ,対称モード成分の波動が効率よく励起されるであろう入射角においても,非対称モード成分がかなりの振幅で励起されること,また接着界面にあらかじめグリースを塗布することで接着性状を悪くした場合では対称モード成分の振幅が異なることが分かった.このことは界面剛性を考慮した数値計算でも同様な傾向が観察されていることから接着界面における波動の不連続的な振る舞いによってこのような振幅の変化が生まれることが考えられる.また,アクリル(低弾性率)/接着剤/ガラス(高弾性率)の異なる材料を接合した試験片では,いずれの入射角においてもアクリル板が対称モード,ガラス板が非対称モードとなる振動が優先的に励起され,入射角はこのモードの励起効率を変えるだけであった.つまり,異種材では解析的には様々なモードが存在しうるが,現実には限定されたモードしか使用できないとことがわかった.また,このモードは接着性状の違いによって減衰率に違いがあったが,その違いは同種材での振幅差によりも小さかった. また,今回の測定では700 kHz~1.0 MHz程度の周波数を用いたが,その測定において低周波側の波動が接着性状の影響を強く受ける傾向にあることがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の当初では伝搬速度による評価も考えており,計測においても伝搬速度は接着性状によって変化することは確認できたが,系統的な変化を捉えることができずにいた.その一つとしては複数ある伝搬モードから単一の伝搬モードを正確に抽出できなかったためと考えられる.一方で比較的低い周波数を利用すれば単一の伝搬モードを励起できる可能性も見えてきた.今後は低い周波数帯(500 kHz以下)での計測を行いたいと考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
500 kHz以下の周波数帯での伝搬挙動の評価に加えて,伝搬挙動の様子を可視化できる光弾性法を用いて接着性状の良否による伝搬挙動の違いを評価することを試みる.光弾性法を用いれば複数のモードが存在する場合と単一のモードが存在する場合での伝搬挙動の違いが接着性状の違いの影響を受けやすいモードを伝搬挙動を可視化しながら判断できる.また.今後は金属材料と高分子材料といった現実の材料の組み合わせに近い試験片での計測を行うことを予定している.
|
Causes of Carryover |
研究概要に示したように普段の超音波計測では使用しない比較的低い領域での超音波での計測が有意義である可能性がある実験結果が得られており,その部分の探触子の手配,実験装置の改良,試験片の作成などに時間が必要であったことから,2019年度での予算の使用が必要となった.今後は低い周波数における波動の伝搬挙動と密着性状との関係をいままで行ってきた方法に加えて光弾性可視化法を用いることで評価する予定である.
|