2016 Fiscal Year Research-status Report
導電性・防汚性を有する高硬度プラスチック窓材の開発
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16K06754
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
野尻 秀智 神奈川大学, 付置研究所, 客員教授 (70546233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 健司 神奈川大学, 公私立大学の部局等, 教務技術職員 (60409951)
中村 先男 神奈川大学, 付置研究所, 客員研究員 (60772069)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エキシマランプ / ポリカーボネート / シリコーン樹脂 / 172nm / 222nm / 組成変化層 / 深さ選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリカーボネート表面に形成したシリコーン樹脂表面に波長172 nmのXeエキシマランプを照射し、シリコーン樹脂表面の光化学改質を誘起しSiO2膜を形成した。ランプの積算照射エネルギーに対するSiO2膜厚の関係を求め、ナノインデンテーション法により表面硬度を測定した。これにより、SiO2膜厚と表面硬度、およびテーバー摩耗の関係を明らかにした。次いで、172nm照射の前あるいは後に、新規に導入した波長222 nmのKrClエキシマランプを照射し、XPSによる深さ方向の組成変化や、表面硬度の変化を測定した。結果、222 nmを172 nmの後に照射すると、深さが300 nm以下の領域にはSi4+すなわちSiO2を主とする酸化物層が、300~600 nmの領域にはSi3+の組成を有するシロキサン化合物層が生成することを確認した。これは、光の吸収係数の小さな長波長の光がより深い部位を改質し、短波長の光は表面付近を改質するという深さ選択性による組成制御ができることを示すものである。ただし、222 nmを照射することにより表面硬度は低下し、耐熱試験においてもクラック耐性の有意な改善は認められなかった。一方、172 nmの照射前に222 nmを照射した場合は、前記のような組成変化層の存在は確認できなかった。また、222 nmのランプ照射の有無に関わらず、表面付近の組成に違いは認められなかった。222 nmの照射順により、特異的な組成層が形成されたりされなかったりする理由やそのメカニズムは確認できてはいないが、222 nmを172 nmの後に照射した場合に形成される特異的な組成層は、化学両論的に不定で反応活性に富み、また空孔が存在する可能性があり、これに化学的な修飾や改質処理を加えることで機械物性の改善や機能発現の可能性が示唆された。また改質層のクラック抑制について効果的な手法を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
172nmと222nmのエキシマランプを組み合わせ、比較的浅い領域の4価SiO2の硬質層とそれより深い領域の3価SiOxの層をXPSにて組成を検討し作り分けができることを見出した。ヘイズ(曇価)2%以下、およびナノインデンテーション硬度1.5GPaの実現について目途がつけられた。
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Strategy for Future Research Activity |
エキシマランプ照射により得られたSiO2やSiOx層の物理的構造を検討する。多孔質性や、密度等を評価し、膜の物性を詳細に調べる。導電性や防汚性を付与するための修飾方法を検討する。より実用に近づけるために、改質層に生ずるクラックの抑制が不可欠であり、クラックの抑制方法をさらに継続して検討する。
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Causes of Carryover |
新たな知見により、試料の分析を追加することとなった。試料の加工を実績のある外注業者に依頼するため協議を重ねたが、結論を得るのに時間がかかり次年度に持ち越す結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
組成分析の方法をXPSに替えてSTEM-EELSを検討するため、従来計画の費用の一部を充てる。
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Research Products
(7 results)