2016 Fiscal Year Research-status Report
マルチスペクトル型熱イメージング法による高分子系複合材料の熱伝導特性の高機能化
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16K06768
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
森川 淳子 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (20262298)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 赤外線カメラ / 赤外吸収スペクトル / 熱イメージング / 熱拡散 / nアルカン / 結晶化 / 熱収縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
赤外分光型熱イメージング同時測定法を用いて、相転移による熱の出入りや、熱現象に伴う化学的な変化を、熱の拡散現象と赤外分光イメージング同時に観測することで、熱伝導を制御した高分子系材料の分子構造設計と機能発現に関する基礎的研究を行なうことを目的とし、第一段階として,測定装置の検証を行なった。 (1)入射光学系:赤外線FPA素子(赤外線カメラ)を用いた分光測定には、回折格子を用いた分散型分光器を試作し、光軸確認用のダイオードレーザー入射の切り替えを可能とした。機械式チョッパーを導入し、スペクトルと熱イメージの高速同時測定へ応用した。感度波長は中赤外線域とし、適切なブレーズ波長を選定し、中赤外の波長レンジにおいて、スペクトルの波長分解能を確認した。試料保持ステージは、試料の上下のヒータ―を装着した温度調節機構を持たせ、観察窓の選定を行った。 (2)出射光学系:集光系と平行光系の2系統の切り替え可能な設計とした。分光器を通過した単色光を楕円鏡を用いて集光し、さらに赤外顕微レンズを通してFPA素子上に撮像した。空間分解能は3~4 μmであることを確認した。 (3)有機分子性結晶の相転移:赤外スペクトル・熱イメージング同時測定により、n-アルカンの結晶化、および回転相転移の結晶ラメラ成長における発熱とともに、赤外吸収スペクトルの波数シフトを観測することに成功した。相変化による輻射率の変化を考慮した、正確な温度を定量的に求める方法論を提案した。 (4)一方、この手法を高分子収縮フィルムの表面の熱拡散率測定に応用した。ポリスチレンフィルムを熱収縮させ、一定の割合で空気を含有する表面の熱拡散率を、変調したレーザーをミクロスケールに集光して照射し、その面内の温度拡散の位相遅れのイメージングを行なった。空気含量の増大により、熱拡散率が減少することを定量的に確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マルチスペクトル分光型熱イメージング法の開発を進める上での、入射系、出射系および光学系の設計を検討し、波数分解能、空間分解能、ならびに得られる温度分解能を詳細に実験から確認する基礎実験を行い、順調に研究を立ち上げることができた。特定の赤外振動吸収と熱伝導の相関を明らかにするための,I.計測法の開発,II.複合系材料設計、等に注力した、詳細な熱解析の方法論の構築を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の装置設計と試作を受けて、大容量データの高速取得における問題点の改良を行なう傍ら、具体的に、より広範囲の材料について、マルチスペクトラム分光熱イメージングデータの取得を開始する。波長分解能、空間分解能、時間分解能のさらに正確な測定を、バンドパスフィルターや、USAF テストターゲット等を用いた測定上の分解能の確認実験により行なう。 相転移、化学反応化のダイナミック測定・スペクトルと熱画像の同時取得を、潜熱蓄熱材等について、中赤外の吸収波長毎に,連続温度走査下にて行なう。 複合系への適用は、空孔やフィラーを含む複雑系の熱伝導解析、物質間界面における急速熱伝達の解明、異方性熱伝導分布のイメージング等を目標に実験を進める。
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Causes of Carryover |
測定精度向上を目的に、予備実験を慎重に行なったため、偏光フィルターや集光光学系の設計に時間がかかり、予算執行を次年度に繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年実施予定であった、偏光板の作成、集光光学系の設計・製作、確認等を繰り越して行なう。
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Research Products
(8 results)