2016 Fiscal Year Research-status Report
ウルツ鉱型窒化ホウ素砥粒を固定したソーワイヤによるダイヤモンド基板の精密加工
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16K06791
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
神谷 修 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (60113891)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 極細固定砥粒ソーワイヤ / 連続製造法 / 大気と真空をつなぐ / ダイヤモンドの切断加工 / 均質ワイヤ製造 |
Outline of Annual Research Achievements |
直径40μmのタングステン芯線に対して直径3μmの窒化ホウ素(BN)およびダイヤモンド砥粒を、真空度が10-3Paの真空炉でろう付けすることにより、出来上がり直径が50μm以下すなわち髪の毛の半分の直径の固定砥粒型ソーワイヤを製造する事が出来た。製造する時に、これまではキサンタンガムを水で溶かして攪拌していたので、不均質になる場合があったために、今年度は航空機ろう付け用の特殊バインダーゲルを用いた。そのため、ワイヤの凹凸が少ない均質なワイヤの製造に成功した。また、今年度、大きく改良に成功したのは、製造の高能率化である。これまでは、砥粒を大気中で塗布してボビンに巻いて乾かし、次の工程で真空炉に入れてから製造していた。しかし、今年度は、大気中から真空中にワイヤを連続で入れる技術を確立して、連続で大量に製造できる方法を実現した。これにより、途中でのボビン巻きをしないで、大気中と真空をつなぎ、連続で製造できるようになった。これは、30年度に計画していた改良を、2年早く実施できたものである。 次に、このようにして製造したワイヤによる切断試験を実施した。タングステンカーバイド(WC)を切断した場合、ソーワイヤの移動量1m当たり約5μm程度の切断速度であった。また、ダイヤモンド基板を切断した場合は、移動量1m当たり約1μmの切断速度であった。ダイヤモンドの切断速度は、およそWCの5分の1である事が明らかとなった。また、10mの長さのソーワイヤを繰り返し使用した場合に、ダイヤモンド基板では2回程度の繰り返し寿命しかない。今後の課題はこの寿命を長くする事である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた目標のうち達成できた事は、次の2点である。ひとつには、市場に類を見ない50μm以下の固定砥粒型のソーワイヤを均質に製造する事が出来たことである。これは、遊離砥粒(スラリー)を用いることなく、水だけで速い切断速度で50μm以下のスリットを加工できること意味しており、スラリーで汚染されないクリーンな加工現場を実現できる可能性がある。ふたつ目は、ソーワイヤの製造工程を、砥粒の塗布と真空炉焼付けの2工程になっていたものを連続させて1工程にまとめたものである。このため、大気中から真空炉中へ連続でワイヤを通過させて製造する装置を完成させた事は実用的な観点から評価が高い。また、この自動化の実現は、計画よりも2年早いので今後の加速的な進捗の可能性がある。 一方で、課題は、窒化ホウ素(BN)からw-BNを抽出することである。現在、連携企業と協力して合成と抽出を試みているが完成には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、次の3点について推進する。 1.ワイヤの製造と改良-これまでの経験から、ソーワイヤの切断寿命は、クラッシュ材(大きな鉱石を砕いたもの)よりも、自然結晶体である方が強度も寿命も長い。これは、本来のウルツ鉱構造の六方晶を破砕しないで、そのまま使用するという意味である。そのため、3μm以下のw-BN 自然結晶をふるい分けしてソーワイヤに使用する事の可能性を、日本工機と検討することとする。つまり、通常のBN 粉末から、爆発合成により、3μm 程度のw-BN 微細結晶とするための条件を検討することとなる。 2.ワイヤ製造上課題となっているのは、固定された砥粒の分布が不均質であるとい う事である。砥粒塗布工程の手作業部分を、本研究費により自動化することにより均質に分布されたw-BN 砥粒のソーワイヤを製作する計画である。 3.切断メカニズムの解明-w-BN 砥粒とダイヤモンド砥粒を比較しながら、被削材(ダイヤモンドと各種金属)に対する切削機構の違いを、電子顕微鏡と表面分析により明らかにする。そのメカニズムから、さらに効率的に、より精密にダイヤモンド基板を加工できるプロセスを創造する計画とする。 4.マイクロソーワイヤ用切断機の研究開発-通常の切断機を使った場合には100μm 以下のワイヤ直径では、「切削抵抗の急変」と「摩擦力によるねじれ」により、容易に破断する可能性が高くなるので、特別な切断装置の開発が望まれる。100μm 以下の直径のソーワイヤをマイクロソーワイヤと呼ぶ。ここでは、マイクロソーワイヤ用の卓上切断機の開発を行なうものである。ポイントは切削抵抗自動制御機構とねじれ防止機構である。
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Causes of Carryover |
装置の整備調整費用として次年度使用額が発生した。本研究の主たる装置である真空炉一式を年度末に、予期せずに移動する必要が生じた。移動は、秋田大学地方創生センター1号館から理工学部2号館である。移動は、年度内に終了したが、年度内に予定していた装置の整備調整費用が翌年になったため次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由で示したように、移動した装置の整備調整を4月に終了した。4月28日付で17万円の請求があり、次年度使用額の74,540円は整備調整の一部として使用する。本来、予想外の装置移動により、平成28年度は整備調整費が発生して、次年度使用額はゼロ以下になる予定であったが、整備調整が翌年になったため見かけ上、プラスの次年度使用額が生じたものであり、使途は既に決まっている。
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Research Products
(1 results)