2017 Fiscal Year Research-status Report
生体インプラント生体活性制御のための表面および内部構造制御技術
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16K06795
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
吉田 佳典 岐阜大学, 工学部, 准教授 (60303674)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 生体インプラント / インプラント造形技術 / 剛性制御技術 / 生体活性 / 選択的レーザ溶融法 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ti丸棒の抜去トルクを測定するためのトルクドライバを完成させ,ビークル犬の顎骨に埋入された人工歯根インプラントの抜去試験に供する試行実験を経て,その操作性の確認および調整を行った. 三次元金属積層造形法によるインプラントの内部構造制御を最終目標とし,積層造形物組織形成に関する基礎的研究を行った.Ti-6Al-4Vを用いた粉末床選択的レーザ溶融法によって引張試験片を作成し,積層材の機械的特性を評価した.その結果,積層材のヤング率は圧延材よりも若干低く,これは後述する独特な積層造形内部組織の影響であることがわかった.また,動物実験を想定した中空小型インプラントモデルを三次元積層造形法で製作し,独自に開発した片持ちはり式破壊試験を行い,その破面観察から造形物の内部状態の観察を行った.内部には,ブローホールや溶融しきれなかった残存粉末が確認され,粉末積層造形の問題点を確認した. 上記結果を踏まえ,積層ビーム走査速度およびハッチングピッチなどの造形条件を変化させて立方体形状に積層し,当該積層物から微小引張試験片を積層方向およびその垂直方向にワイヤー放電加工によって切り出し,独自に開発した画像解析微小引張試験によって材料内部のピンポイントの機械的特性(引張強さおよび破断相当ひずみ)を評価して,積層条件の最適化を検討した.また内部のミクロ組織に及ぼす積層条件の影響についても検討した. またラット大腿骨内部長手方向に埋入可能な中空小型髄内釘モデルを積層し,実際の骨内部に長手方向に貫通させることでその寸法の妥当性および埋入手術における操作性について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては,骨へのインプラント埋入によるストレスシールディングを防ぐべく,インプラントの剛性の低減を目指している.従来研究にあるような材料自体のヤング率低減ではなく,薄肉中空構造化による剛性低減を行うべく,昨年度,三次元金属積層造形法に方向転換した.積層造形によるインプラントモデル製造過程における,内部欠陥を有する積層組織形成およびこれによる機械的特性の低減が発現した.これによって,将来のインプラント破壊事故につながる恐れが想定されたため,積層条件の最適化が必要であるとの考えに至り,この検討に時間を要した. 一方,積層した中空丸棒インプラントモデルの埋入前健全性検討のために,片持ちはり式破壊試験法を開発した.これは造形物の端部を固定し,もう一方の端部に集中荷重を付与し,たわみ量と荷重を破断発生まで計測する技術である.本手法においては,インプラント表面に白黒ランダムパターンを塗装し,デジタル画像相関法を用いることで,長手方向に分布するたわみ分布の径時変化を得ることができる.これと荷重変化を考慮することによって,インプラント内部の断面二次モーメントを推定することに成功した.これによってインプラント埋入前に,現物が当初の設計通りの機械的特性を有しているか否かを評価できることを意味し,当初計画になかった新しい成果を得ることができた. ただし昨年度想定していた動物実験には至っておらず,平成30年度に動物実験を行うことによって当初の目的を達成することが肝要である.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成30年度においては,平成29年度に得た積層造形条件を用いて中実および中空髄内釘インプラントモデルを造形し,ラット大腿骨内部に埋入する試みを行う.その後,ストレスシールディングの発生有無および表面における骨伝導の状況を調査する.動物実験方法については,従来から検討している通りまずは9週齢のラットを用いて,その両大腿骨内部に三次元積層造形で製造した種々の表面凹凸を有するチタン材髄内釘インプラントモデルを埋植して,これを2週間生育することで行う.ラット埋植Ti試料およびその周辺の骨組織を含む箇所を切り出し,厚さ20マイクロメ ートルに研磨加工し試料とする. インプラントモデルの形状および埋入オペレーションについては,すでに動物実験業者との打ち合わせを進めており,速やかに実験を行う予定である.
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由) 三次元積層条件の最適化という新たな課題が発生してこれに取り組んだことおよび片持ちはり式試験を開発してインプラントモデルの健全性および機械的特性評価を行ったことによって,動物実験が遅れたため. (使用計画) ラットの両大腿骨内部に,三次元積層造形で製造する中実および中空薄肉構造ならびに種々の表面凹凸を有するチタン材髄内釘インプラントモデルを埋植する動物実験を速やかに行う.
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Research Products
(3 results)