2016 Fiscal Year Research-status Report
レーザを用いた二軸引張応力場における極薄金属箔の表面あれ進展と破壊のその場観察
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16K06800
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古島 剛 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (30444938)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 塑性工学 / 金属箔材 / 延性破壊 / 表面あれ / マイクロ加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,極薄金属箔の二軸引張応力場における表面あれ進展やひずみ分布・履歴,くびれ挙動,結晶粒の変形を,レーザ計測を応用してその場観察することにより破壊メカニズムを解明するものである. 二軸引張応力場における極薄金属箔における破断に至るまでの表面あれ進展やひずみ分布・履歴,くびれ挙動,結晶粒の変形を時々刻々その場観察可能なマイクロ二軸引張試験装置の設計・開発を行った.二軸引張試験法としては,試験片寸法の幅によって応力場を変えることが可能なMarciniak法を小型化したものを採用し,試験装置を開発した.開発した試験機を用いて試験片表面の3Dプロファイル計測とひずみ計測の両方を同時計測に成功した.またミクロ領域のDICによる結晶粒個々の変形とマクロレベルでのひずみ分布および破断ひずみが高精度に測定できているかの妥当性を検証するために,試験片の変形部に超マイクロサイズの1辺50μmの格子をフォトレジストによって作成し,格子の変形度合いを顕微鏡で測定することによってひずみ等の評価を行い本手法の妥当性の検証を行った. さらに通常DICでひずみを計測する場合,スプレーによるランダムパターンの塗布を行うが,塗料の塗布は試験片表面の表面粗さの変化を観察する際に影響を及ぼす可能性がある.そのため本研究では照明を白色光ではなく,レーザ照明を用いることによって試験片表面にランダムなレーザスペックルパターンを生じさせ,その変化をDICによって捉えることで完全非接触のひずみ計測を実現し,単軸応力状態におけるひずみ分布の有効性を検証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年10月に研究代表者の所属が首都大学東京から東京大学に変更したことで,装置の仕様を変更しながらも、当初の目的であった二軸引張応力場における極薄金属箔における破断に至るまでの表面あれ進展やひずみ分布・履歴,くびれ挙動,結晶粒の変形を時々刻々その場観察可能なマイクロ二軸引張試験装置の設計・開発に成功している.またレーザによるひずみ分布計測に関しては単軸応力状態における妥当性の検証に成功しており,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
首都大学東京で開発した試験機を東京大学に移設し,本研究では純銅,ステンレス鋼,純アルミニウム,純チタンのそれぞれ板厚50μmの用いる極薄金属箔を用いる.各種材料についてマイクロ二軸引張試験装置を用いて,まずは試験片の中央部の局所的な表面あれ進展とひずみ分布の評価を行う.結果については応力状態ごとに破断時のひずみを導出し,成形限界線図および破壊限界線図を作図し,各種材料の表面あれ進展挙動と破断挙動のデータを蓄積し,材料・結晶粒径・応力状態が表面あれ進展挙動や破断ひずみに及ぼす影響を調べる. さらに表面あれ進展,破断ひずみに及ぼす応力状態・材料・結晶粒径の影響に関する基礎データを基に,より高解像度かつ広視野にわたって表面あれ進展,ひずみ分布,くびれの発生挙動,結晶粒の変形,破断箇所を調査する条件を選定する.レーザ顕微鏡とレーザ照明を配置したマイクロ二軸引張試験装置を用いて,時々刻々,塑性変形をしている間の表面変化をその場観察する.このときの観察には,レーザ顕微鏡の高倍率なレンズを用いた高精度な3D表面プロファイルと高解像度の表面画像の撮影を行う.また同時に,電動XYステージを移動させ,隣接する観察領域を同様に撮影し,それを画像連結する.この作業を繰り返すことによって,二軸応力下を受ける極薄金属箔表面の高精度かつ広視野わたる表面あれ進展,ひずみ分布,結晶粒の変形,破断箇所の完全非接触その場観察を行う予定である.
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Causes of Carryover |
年度の途中で、首都大学東京から東京大学へ異動することがわかり、次年度に本研究で開発した試験装置や関連装置等を移設する必要が生じた。そのため、装置等の移設費用に使用するために次年度使用額が生じた。移設費用を捻出するため、当初予定していた半導体レーザの購入価格を下げ、さらに駆動用のモータを手動で駆動することによって対応した。また旅費については、当初予定していた国際会議発表をヨーロッパからアジアに変えることによって航空券代を節約することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究で開発した試験装置や関連装置等を移設する費用として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)