2018 Fiscal Year Research-status Report
鉛フリーはんだの大量生産に向けた共軸二重円筒回転粘度計による粘度測定に関する研究
Project/Area Number |
16K06812
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
西 剛史 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (70518331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 弘道 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (70168946)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鉛フリーはんだ / 粘度 / 共軸二重円筒回転粘度計 / アレニウスプロット / 活性化エネルギー / 粘度評価式 / 酸化皮膜 / 還元雰囲気 |
Outline of Annual Research Achievements |
溶融金属を取り扱う加工プロセスにおいて、流動性の基礎物性である粘度を知ることは流動特性を検討する上で必要不可欠である。しかし、鉛フリーはんだの粘度データに関しては、粘度測定で用いている容器回転振動法が容易ではないという理由から、信頼性のある実験データは殆ど存在しない状況であった。また、代替的手法を考えるにしても、鉛フリーはんだのような化学的に活性かつ低粘度という性質を有するものを対象とする場合は測定手法がかなり限定されてしまうという問題点があった。このような問題点を解決するため、共軸二重円筒回転粘度計を還元雰囲気にしたグローブボックス内に設置することにより、簡便に粘度測定が行える環境システムを構築した。鉛フリーはんだ試料として、Sn-4.0 wt.%Ag-0.5wt.%Cu, Sn-3.0 wt.%Ag-0.5wt.%Cu, Sn-1.0 wt.%Ag-0.7wt.%Cu, Sn-0.7wt.%Cuの4種類を選択した。いずれの合金も温度に対して負の温度依存性を示し、アレニウスプロットを取ると良好な直線関係が得られ、温度と粘度との評価式を作ることに成功した。各試料におけるアレニウスプロットで得られた粘性流動の活性化エネルギーと粘度の値は共に試料による大きな差が見られなかったことから、溶融状態における構造に大きな差が見られなかったことを示唆している。また、表面をSEMで観察した結果、酸素の割合が多くなっていることから、表面の酸化被膜がニュートン流体として解析できず、ダイラタント流体として解析を余儀なくされた原因となったのではないかと推測している。温度と粘度との評価式を作ることに成功したことで、シリコン単結晶基板と鉛フリーはんだとの粒子法による濡れ性シミュレーションが可能となりつつある状況にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
鉛フリーはんだを対象とした粘度測定が可能となり、あとは測定回数を増やして物性値の精度を向上させることで、温度だけでなくAg添加量をパラメータとした粘度評価式の構築ができるという道筋はできてきた。しかし、粘度評価式の構築に向けた段階でデータの再現性に問題があることが発覚した。具体的には、昨年度実施した結果がこれまで測定してきた値よりも小さい値が得られていた。現在も原因究明を行っている段階であるが、測定中にスピンドルと容器とが接触していた可能性が一番の原因と考えている。現在アルミニウム製のスピンドルを用いて粘度測定を行っており、浮力による容器とスピンドルの接触を防ぐために錘を取り付けていたが、錘の重心のバランスが悪いことで、スピンドルの回転挙動に偏心が見られ、それにより容器との衝突がみられるのではないかと推測している。この課題をクリアすることで再現性の取れた誤差評価付きの粘度を測定し、鉛フリーはんだを対象とした温度をパラメータとした粘度評価式の構築に本格的に着手する。
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Strategy for Future Research Activity |
測定回数をさらに増やして物性値の精度を向上させ、鉛フリーはんだの材料設計に必要な温度とAg添加量をパラメータとした粘度評価式の構築することを目標として実施してきたが、昨年度実施した結果は、これまで測定してきた値よりも小さい値が得られていた。理由としては、測定中にスピンドルと容器が接触していた可能性がある。その要因をクリアするため、浮力によりスピンドルと容器の接触を起こさせないための錘の重心位置を正確に見積ることで偏心の影響を軽減するか、もしくはスピンドルに錘をつけなくても浮力で接触しない材質のスピンドルを作製するかのどちらかを選択し、再現性の取れた誤差評価付きの粘度測定を実施する。その上で鉛フリーはんだを対象とした温度をパラメータとした粘度評価式を構築する。また、シリコン基板と鉛フリーはんだとの濡れ性シミュレーションを試験的に行い、実際の現象との比較を行うことで、粘度データの検証についても行う。なお、濡れ性シミュレーションを正確に行うためには、シリコンとはんだとの濡れ角がある程度明確でないと十分なシミュレーションができない。そこで、セサイルドロップ法を用いた基板と鉛フリーはんだとの濡れ角の測定を追加で行うことにより、本研究課題が完結するものと考えている。
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Causes of Carryover |
共軸二重円筒回転粘度計を用いた鉛フリーはんだの粘度測定において、測定対象の試料温度の均熱化を試みたところ、今まで測定で得られた値よりも低い値が得られた。この測定値の精度を検証するには、繰り返し測定をして精度を算出する必要が生じたため、3~4回の繰り返し測定を実施した上で論文投稿を行うこととなり、未使用額が生じた。そのため、1年間の研究期間を延長する。
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