2017 Fiscal Year Research-status Report
非破壊的手法を利用した球状黒鉛鋳鉄の疲労限度予測法の確立
Project/Area Number |
16K06815
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
白木 尚人 東京都市大学, 工学部, 教授 (20298011)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 疲労限度 / X線CT / 球状黒鉛鋳鉄 / 疲労試験 / 欠陥寸法 / 破壊起点 / 推定 / 極値確率紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高さ500mm,幅500mm,長さ500mmの鋳塊を作製し,そこからJISに準拠した軸荷重疲労試験片を15本採取した.疲労試験前に試験片の平行部を高分解能のX線CTで観察した.X線CTには,東芝IT&コントロールシステム(株)製TOSCANER-33000μFD-Zを用いて、15本の軸疲労試験片を観察した.観察範囲は試験片の平行部とした.試験片平行部を横断面に3000枚スキャンし,1断面のスライス厚さは約0.024mmである.この断面画像より画像処理を行い,観察部分に存在する欠陥寸法を降べきの順に並び替えた.軸荷重疲労試験は,電気油圧疲労試験機を用いて荷重繰返し周波数は17Hz,応力比R=-1の正弦波負荷制御システムを用いて試験を行った。疲労試験の打ち切り回数は1×10の7乗サイクルとした.なお,疲労試験は室温で行った. その結果,疲労試験の破壊起点は引け巣であり,概ねX線CTで観察された比較的大きな欠陥となっていた.X線CTで観察された最大欠陥寸法より推定された疲労限度と疲労試験のS-N線図より求めた疲労限度は,約5%の誤差を有するものの高い推定精度で予測できることが明らかとなった. しかし,疲労試験の破壊起点は,必ずしもX線CTで観察された最大欠陥寸法とはならない場合もあった.そこで,各試験片を大きい順から10番目までの欠陥,すなわち150個の欠陥について極値確率紙にプロットし,累積分布関数F=50%の時の欠陥寸法を求め,その欠陥寸法から疲労限度を推定し,実験で求めた疲労限度と比較した.その結果,破壊起点の欠陥よりも小さい寸法の欠陥も含むことから,最大欠陥で求めた場合よりも推定精度は劣るが,それでも約10%の誤差程度であった. 以上の結果,X線CTによる疲労限度の推定は,比較的大きな欠陥寸法を有する球状黒鉛鋳鉄に対して有効な手法であることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本学では,X線CTを所有しておらず,他機関の装置を借用する必要があった.平成28年度末に当初の試験条件を満足に対応して頂ける装置メーカーとの交渉がまとまり,予定していた本数の疲労試験片のスキャンが可能となった.費用に関しても,本研究課題の科研費の範囲で利用出来ることとなり,平成29年5月よりX線CT装置の使用が可能となった.また,解析についても容量の大きな画像データの処理するために必要なパーソナルコンピュータを購入し,得られた画像データを順次解析し,概ね完了した.軸荷重疲労試験は本研究室で保有する電気油圧式疲労試験機を用い疲労試験を行った.疲労試験も平成29年度内に概ね完了し,破面観察も疲労試験が終了したものから行うことができた.一部,データ数の追加のため,平成30年度に疲労試験および破面観察を行うが,概ねデータがまとまっており,学協会に公表できる段階にある. 研究代表者の学内運営は平成29年度は前年度より負担が軽減してはいないものの,学内運営業務を効率化することにより,その分を研究時間に当てることが可能となり,当初申請の際に記したエフォートで研究課題を遂行することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度内にX線CTによる疲労試験片のスキャン,疲労試験,試験後の破面観察も概ね終了している.平成30年度は,一部データ数の追加のため,疲労試験および破面観察を行うが,概ねデータ・考察はまとまっており,学協会に公表できる段階にある.その成果の一部は平成30年度5月に開催される(公社)日本鋳造工学会・第171回全国講演大会で講演する.さらに同年9月にポーランドで開催される世界鋳物会議(WFC2018)においても講演を予定している.講演終了後は,講演した機関誌に論文の投稿を予定している.平成30年度の研究費は,講演大会参加の為の旅費および参加登録費に充当する予定である.
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Causes of Carryover |
物品費は大きな画像データを解析するためのパーソナルコンピュータの購入分である.また,その他の項目は,X線CTの装置利用料金である.この装置を用いて観察するための疲労試験片は15本であり,分析に必要と思われる利用時間から利用料金を見積もったが,観察条件設定や観察時間を効率化することで当初の見積りよりも安価で押さえることができたためである.平成30年度5月に開催される(公社)日本鋳造工学会・第171回全国講演大会で講演する.さらに同年9月にポーランドで開催される世界鋳物会議(WFC2018)においても講演を予定している.平成30年度の研究費は,講演大会参加の為の旅費および参加登録費に充当する予定である.
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