2016 Fiscal Year Research-status Report
水平回転円筒面上の液膜伸張による熱と物質移動の能動制御
Project/Area Number |
16K06820
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
埜上 洋 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (50241584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸岡 伸洋 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40431473)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 流動 / 伝熱 / 物質移動操作 / 回転円柱 / 液膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
先ず、水平回転円柱を液体に半ば浸漬して回転させ、円柱側面に形成される液膜の厚さおよび流速の測定を行った。液膜面にレーザーを照射して液膜表面形状をハイライトして撮影した画像を解析することで膜厚の測定を行った。また円柱側面に形成した液膜を一定時間掻き取って秤量することで、液浴から回転円筒面に巻き上げられた液流量を測定し、測定した液膜厚さに基づいて液膜内の平均流速を決定した。測定では直径48.2 mmの塩ビ製の円筒を用い、液膜厚さおよび液流速の測定は円柱の回転速度100から1500 rpmの範囲でまた液柱浸漬深さは円柱直径の0.05倍から0.9倍の範囲で種々変更して行った。液流量は全体として回転数を高くするほど、また浸漬深さを深くするほど増加する傾向となった。しかし浸漬深さが浅い領域では、回転数により傾向が異なり、高回転側では浸漬深さの増加により急激に液流量が増加して、浸漬深さに対する増加量が徐々に低下するのに対して、低回転側では液流量がほぼ一定、または極小値を占める傾向が明らかになった。また液膜内の液体流速については、円柱の回転表面速度に対して大きな遅れが生じることが明らかになった。 本研究が最終目標とする吸収式冷凍機内では、吸収器での吸収液への水蒸気の吸収が生じるが、第一年度は吸収液として水酸化ナトリウム水溶液を、吸収成分として二酸化炭素を使用して、回転円柱面上に形成した液膜への吸収速度を測定した。吸収速度の測定は液膜形成挙動と同様に円柱の回転速度および浸漬深さを変更し、また吸収成分の分圧を変更して行った。実験の測定範囲内において、回転速度の増加とともに吸収速度が増加することを確認し、その定量化を行うことが出来た。その結果と上述の液膜形成挙動との関連について検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一年度は実施内容として (1) 液膜の形成挙動および気液流動特性および (2) 液膜伸張条件における吸収速度の測定を計画していた。当初、液膜の形成挙動の測定には非接触法としてレーザー変位計を、また接触法としてマイクロメータを用いた探針法を使用することを予定した。探針法は測定そのものおよび非接触法の精度確認を目的として設定したが、液面が平滑となる条件では良好な測定結果が得られるが液膜表面の振動が生じる場合には測定手順が煩雑となる問題が生じた。またレーザー変位計については測定に十分な反射が得られず、測定精度に問題があることが分かった。そこで液膜表面へレーザー照射して直角方向から静止画像を撮影し、これを画像解析することで液膜表面形状および平均厚さを取得する方法を開発し、実績の概要に記載したように液膜の形成挙動および流動特性について測定・定量化することが出来た。吸収速度の測定に関しては、ほぼ当初計画通りに実施し、結果を得ることができた。これらのことから、本研究の進捗状況は (2) おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
第一年度に測定した液膜形成挙動と物質移動速度の関係性についての検討を継続し、関連をより詳細に検討して、液膜形成・流動およびガス側・液側の物質移動モデルおよび物質・成分収支モデルの確立を目指す。 物質移動と熱移動の相似性から、本研究で開発を進める機構は伝熱操作に対しても有用であると考えられることから、第一年度に利用した装置と同様の構造を有する蒸発装置を作成して蒸発速度の測定を行い、回転円筒の液膜伸張による蒸発速度の増進効果を定量化する。蒸発速度測定装置においては、回転円筒内への発熱体設置および再生槽内の吸収液の温度上昇を防止するための断熱層設置などにより実験条件を安定化させる構造とする。蒸発速度の定式化に当たっては上述の物質移動モデルを拡張し、回転円筒および液膜の伝熱モデルを取り込み、詳細な検討を行う予定である。 上述の実験的な検討に加えて、回転円筒による液膜の形成挙動および系全体の物質移動・熱流動について、熱流動解析モデルの構築を行う。これを用いて種々の操作条件下における吸収・再生挙動を推定し、冷凍機の性能向上に関する検討を行う。熱流動解析については、応募者らはこれまでに種々の多相反応系について反応・伝熱・流動解析を行ってきており、その中から包括的な熱流動解析に最適な手法を選定してモデルを構築する予定である。全体モデルの構築に支障が出る場合には、装置内の吸収・蒸発についての伝熱・物質移動をいくつかの要素に分割し、要素毎のモデルを構築した上で、要素毎の解析を行い、全体としての整合性を保ちつつ連結する手法により熱流動解析を進める予定である。
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