2017 Fiscal Year Research-status Report
水平回転円筒面上の液膜伸張による熱と物質移動の能動制御
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16K06820
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
埜上 洋 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (50241584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸岡 伸洋 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40431473)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 回転円柱 / 液膜 / 物質移動操作 / ガス吸収 / 伝熱 / 流動 |
Outline of Annual Research Achievements |
円柱を水槽内に注入した液体に半ば浸漬して回転させ、円柱側面に液膜を形成させた。この水槽を内部を所定雰囲気に調整した密閉容器内に設置して、容器内の雰囲気から液膜へのガス吸収実験を行い、吸収速度の定量化を行った。吸収ガス成分として二酸化炭素、吸収液として蒸留水および水酸化ナトリウム水溶液を使用した。円筒は直径 48.2 mm,長さ 164 mm であり、回転数は 100 から 1500 rpm とした。吸収液の pH を定期的に測定して液中の二酸化炭素濃度を求め、その変化から吸収速度を決定した。いずれの吸収液の場合も、円筒の回転により二酸化炭素吸収速度は無回転の場合と比較して飛躍的に増大し、また回転数の増加とともに吸収速度は増大しており、液膜への吸収による吸収速度の高速化効果を確認した。雰囲気を純二酸化炭素とした条件での測定により、吸収速度から液膜内物質移動係数を同定した。水酸化ナトリウム水溶液への吸収速度は溶液中二酸化炭素濃度および溶液pH範囲により変化するが、物質移動係数として整理すると、吸収液種類および pH に関わらず液膜形成条件により整理できることを新たに見出した。 本機構の吸収式冷凍機への応用を見据えて、蒸発槽から吸収槽に向けた水分蒸発速度および伸張液膜からの水分蒸発速度を検討するため、新たに装置を作成した。この装置では雰囲気の蒸気圧に加えて液膜温度の制御を可能とするため、浸漬する円柱を回転二重管型熱交換器としている。この装置をグローブボックス内に設置して液膜からの水分蒸発および蒸発槽からの水分蒸発速度の測定を行う。今年度は液膜からの蒸発速度について実験を行い、液膜形成により蒸発速度が向上することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第二年度は、液膜形成挙動と物質移動速度の関係の検討、蒸発装置作成およびその測定および熱流動解析モデルの検討を設定した。物質移動速度の検討については時間的に変化する吸収速度を液側物質移動係数として定量化することに成功しており、当初の目的を達成している。蒸発装置の作成および測定に関しては、装置の製作および実験環境の構築を行い、予備実験により効果を確認した。装置作成に当たっては回転機構を持つ熱交換器部分の調整に当初予定よりも時間を要したため、実験開始時期がやや遅延したが、これまでに予備実験を行って定量実験への準備が整っていることから、全体の進行としてはおおむね順調であると判断する。熱流動解析モデルについては、使用するモデルの枠組みおよび取り込むべき現象の策定をほぼ終えており、次年度のモデル開発への準備を終えた。上記を勘案し、本研究の進捗状況は「 (2) おおむね順調に進展している」ものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまでに測定してきた物質移動過程について継続して定量化を進める。具体的には、ガス吸収速度に関しては液側物質移動速度についての定量化およびモデル化の基礎検討が完了しており、さらに気相側の物質移動速度の定量化とモデル化を行う。また蒸発速度に関しては第二年度に作成した実験装置を用いて気相側の蒸気圧および液膜温度に対する変化を測定してこれらの定量化を進める。 液膜表面の気液界面近傍領域の物質移動を熱流体工学の手法を用いて熱移動・物質移動および流動を連成するモデルの開発を行う。このモデルを用いた解析結果を定量化した結果との比較を行うことで妥当性を検証する。さらに諸因子の影響解析を行うことで任意の液膜伸張条件での物質移動性能の推定を可能にする。 上記により定量評価・推定される回転円柱表面に形成した液膜の熱・物質移動特性を基礎データとして、本機構を吸収式冷凍機に組み込んだ際の性能予測を行う。
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Research Products
(3 results)