2018 Fiscal Year Research-status Report
エレクトロ・アコースティック場を駆使した多分散ナノ粒子の新規膜分級プロセスの開発
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16K06824
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
向井 康人 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30303663)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 分級 / 膜分離 / ナノ粒子 / 超音波 / 電場 / プラズマ / 溶液環境 / 剪断力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度に超音波照射は大小2粒子の分画精度と分画速度を共に向上させる有効な手段であることを明らかにしたので、平成30年度も超音波照射の検討を継続し、2成分を効果的に分画するための照射条件や照射方法を探索した。濾過器の材質をこれまでのステンレスからポリプロピレンに変更することにより、音波透過率が顕著に増加して分画性能を向上させることができた。濾過器の位置や超音波水槽の水位を適切に調節して、膜面の位置を定在波の腹と一致させることにより、最大の分画性能が得られた。3種の周波数28kHz、45kHz、100kHzの効果を比較し、キャビテーションによる衝撃力がより顕著な低周波の28kHzにおいて最も高い分画性能が得られた。 平成29年度に膜に大気圧プラズマを照射することで膜ファウリングを極限的に抑制できることを明らかにしたので、平成30年度も大気圧プラズマ照射の検討を継続し、最も表面改質効果の高いガス種や照射条件を探索した。N2プラズマでは改質効果がほとんど見られなかったが、ArプラズマとO2プラズマを照射したときに顕著な膜性能の向上が確認された。発光分光分析により、Ar、O2プラズマでは酸化能力の高いOHラジカルなどの酸素由来のピークが検出されたが、N2プラズマでは確認されなかった。さらにpHを中性域からアルカリ性域に移行することにより、粒子と膜の負のゼータ電位が増加し、膜性能の向上につながった。 膜面上に形成される大粒子堆積層が小粒子の膜透過に対して予想以上に大きな障壁となったので、撹拌型濾過器を用いて膜面に剪断流を作用させる手法の適用を試みた。平成30年度はその基礎特性として、超音波を照射しない条件下で撹拌の効果を調査した。撹拌による剪断力の付与により大粒子堆積層が効果的に排除され、小粒子の膜透過が促進されることを明らかにした。また、撹拌速度には最適値があることも判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アコースティック場の利用は期待通りの成果が得られたが、エレクトロ場の利用は予想より効果が低く、特に両者の効果を同時に得る条件の探索が困難であった。一方、プラズマ照射が本法の付加技術として有効であることを見いだしたので、エレクトロ場の代替技術としてプラズマ照射の有用性を追求していく予定である。加えて、撹拌による剪断流の付与も代替技術として有望であることを明らかにしたので、さらに検討を深めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
主として、次の5点より研究を進める。 (1)2成分系ナノコロイドの分画性能に及ぼす超音波照射の影響:超音波の照射により2成分系の分画性能を改善できることを明らかにし、2成分を効果的に分画するための照射条件や照射方法を究明したので、今年度も引き続き超音波照射の有効な適用方法について検討する。 (2)プラズマ表面改質による膜の超親水化の影響:大気圧プラズマの照射により膜ファウリングを極限的に抑制できることを明らかにし、最も表面改質効果の高いガス種や照射方法・照射条件を究明したので、今年度も引き続き大気圧プラズマの有効な活用方法について検討する。 (3)膜面剪断流による分画の高性能化:撹拌型濾過器を用いて膜面に剪断流を作用させる手法が極めて有望であることを明らかにしたので、今年度は撹拌による剪断力と超音波による衝撃力との相乗効果による分画のさらなる高性能化を図る。 (4)多分散ナノコロイドの分級操作への応用:多分散ナノコロイドの分級操作に対して、超音波、プラズマ、剪断流の各技術を複合的に適用し、ナノ粒子の分級性能に及ぼす各技術の適用条件の影響を明らかにする。これらのデータに基づき、分級性能を自由自在に制御するための操作方法について種々探求する。 (5)最適操作指針の提出:これまでの研究成果を総括し、また、速度的な観点からの検討も加え、目的の分級精度と高い分離速度を両立する最適な操作指針を提出する。
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Causes of Carryover |
(理由)当初想定していた電場印加の効果が期待通りには得られなかったので、代替技術として大気圧プラズマと膜面剪断流を新たに導入することになり、そのための実験装置の追加や改良が必要になった。 (使用計画)主として、プラズマ装置と撹拌型濾過装置の周辺部材、および国際会議The 47th Textile Research Symposiumに参加するための出張旅費・参加費に充てる予定である。
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