2016 Fiscal Year Research-status Report
現象を分けて考えるアプローチによる分子拡散域で起きる非等モル相互拡散のモデル化
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16K06831
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
甲斐 敬美 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (00177312)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 拡散 / 非等モル / 多孔質体 / 分子運動 / 分離操作 / 分子拡散 / 相互拡散 / Grahamの法則 |
Outline of Annual Research Achievements |
等圧条件での多孔質体内の気相二成分相互拡散が非等モルであることは1833年に報告され、その後、Grahamの法則と呼ばれるようになった。しかし、これまで提案されてきた現象を説明するモデルはすべて「等モル相互拡散係数」を使っているため、前提条件や導出過程に問題がある。これは分子拡散領域では等モル相互拡散になるという常識に従っているためであるが、本研究では、分子拡散領域でも比較的細孔が狭い場合には、粘性の影響で等モルにならないと考え、拡散現象をブレイクダウンして分子運動による移動とそれによる圧力勾配で生じる粘性流を組み合わせることによって、この現象を説明するモデルを構築した。分子固有の拡散係数は混合物中におけるそれぞれの成分の分子の速さと平均自由行程より導出した。このモデルを検証するため、充てん層における定容系での相互拡散実験を行った。充てん層には長さ10 cm程度のステンレス鋼の管を使用し、内部に数十ミクロンメートルのガラスビーズを充てんした。充てん層をあるガスで満たした後に一端を他のガスでスウィープすることによってガスの交換を行った。他端における圧力変化を微差圧センサーで測定した。センサーからのアナログ信号はA/D変換ボードを使ってデジタル信号に変換し、圧力の時間変化をパソコンに記録した後に解析を行った。使用したガスは、水素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、窒素、二酸化炭素である。得られた結果とモデルによる計算値を比較すると比較的良好な一致が得られた。非等モル相互拡散は拡散の本質に深く関わる現象であるにも関わらず、これまでそのメカニズムについて詳細な説明はなされていない。化学装置の操作においても、深く考察されることはなかったが流動触媒層の運転では支障がでる現象を引き起こすこともあるため、科学的な観点からだけでなく実用的な観点からも正しい認識を持つことは重要と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、分子拡散領域の等圧条件の多孔質体で起こる非等モル相互拡散現象のメカニズムを明らかにすることである。そのために拡散現象を分子固有の拡散と非等モル拡散によって生じる圧力勾配による粘性流を組み合わせたアプローチを採用した。平成28年度は、分子固有の拡散係数を導出することと、それを使ったモデルと定容系で行う拡散実験の結果の比較をすることであった。モデルについては、混合物中におけるそれぞれの成分の分子の速さと平均自由行程を考慮してChapman-Enskog式を基にして導出することができた。このモデルによる計算結果と過去の論文の実験データを比較検討した内容は化学工学会第47回秋季大会および 第22回流動化・粒子プロセッシングシンポジウムにおいて発表した。さらに、定容系充てん層で実験を行い、その結果もモデルによる計算値と比較し、良好な一致をすることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はさらに定容系での相互拡散の実験を継続する。まずは、流路径が一定のキャピラリーを使用した実験が可能であるか検討を行う。キャピラリーの場合には、流路径の分布および流路長(迷宮度)の影響を考える必要がなく、より正確なモデルの解析が可能となる。この方法ができない場合には代替方法として、粒子径の分布をさらにシャープにした充てん層での実験を行う。これは粘性流れの推算式であるコゼニーカルマン式の定数を従来報告されている値で整理できるため、モデルの検証精度が上がると考えられる。また、使用するガスとして、分子量は等しいが粒子径や粘度が異なるガスを使って、固有の拡散係数の検証を行う。比較するガスとしては、窒素とエチレンの組み合わせが考えられる。
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Research Products
(4 results)