2017 Fiscal Year Research-status Report
ピコリットル反応場における酸化チタン粒子の複合化と用途開発
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16K06837
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
白川 善幸 同志社大学, 理工学部, 教授 (70262459)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ピコリットル反応場 / 中空粒子 / 複合化 / 多孔質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,インクジェットノズルを用いて正確にピコリットルサイズに制限された空間を形成し,その空間を反応場とすることでナノ構造が制御された単分散で多孔質な中空酸化チタン粒子を作製することである。また,この粒子を用いた用途開発として,中空粒子内にビタミンCを導入し,DDS における徐放性能の高性能化を図ること,ならびに中空粒子内に触媒金属を析出させ,中空内にも触媒活性を持った光触媒複合粒子を作製することも目的である。2017年度は,中空粒子にビタミンCを導入し,徐放性を検討した。また,中空酸化チタンの結晶構造を変え、アナターゼ構造にブルッカイト構造を混入させる検討を行った。さらに,酸化チタンに窒素をドープし,可視光領域の光の利用を検討し,加えてインクジェット以外の液滴形成方法についても検討を行った。 中空粒子に導入したビタミンCの徐放性については,まずビタミンCを導入する方法として,中空粒子合成時の導入と粒子合成後の浸漬による導入の2つ手法を検討した。現状では後者の方が導入量は多く,中空内複合としては完成度が高い。また,ビタミンC誘導体についても同様に実験を行いその差異について議論した。続いてシェルとなるチタニア中空粒子の光触媒性を向上させることを目指し,アナターゼ構造よりバンドギャップが大きいブルッカイト構造を含む中空粒子作製方法について検討した。さらに,可視光領域における触媒活性を向上するために,尿素を窒素源として中空に導入し,シェルを窒化させるプロセスを確立した。 以上の結果を踏まえ,用途開発において重要な因子となる量産化を念頭に,ナンバーリングアップとしてのノズルの多連化ならびにノズルレスによるエマルション形成を検討した。後者については液液界面に電場を印加することで微小液滴を生成し,油相に分散させることでエマルションを作製するプロセスの開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画における①インクジェット吐出システムの改良設置,②粒子径および細孔径分布制御のための溶液調整と粒子作製,③本システムを利用した複合粒子作製とその用途開発について,①,②については完了し,③のビタミンC徐放性複合粒子,窒素ドープ中空粒子については完了し,後は金属担持複合粒子を残すのみである。 インクジェットシステムについては,ノズルの変更,液滴形成法の変更ならびに吐出条件の詳細について検討を重ね,本研究の溶液に最適な新しいインクジェットシステムを完成させた。この開発により吐出液滴の数量をこれまでに比べて大幅に増加することができた。粒子径分布については,インクジェットシステムの吐出条件によってほぼ決定でき,溶液条件ならびに適切なピエゾ素子のハード条件(ヘッド電圧,周波数,パルス幅)を設定することで,想定した範囲の極めてシャープな粒子内細孔径分布を得ることに成功した。 このインクジェットシステムを使用した複合粒子作製については,まずチタニア中空粒子にビタミンCならびにビタミンC誘導体を導入し,その徐放性を確認した。続いて可視光領域利用のための窒素ドープ酸化チタンをインクジェットシステムを用いて合成し,中空特性を活かした導入法を提案した。残る金属担持粒子について,従来よりもさらに活性を向上するためにシェルの結晶構造を変え,アナターゼ構造にブルッカイト構造を混合させた粒子を作製した。現在,ブルッカイトの含有量を増やすべく,溶液条件,吐出条件を検討している。さらに量産化のための液滴形成方法についても検討を行い,特に液液界面に電場を印加し微小液滴を生成し,分散させることでエマルションを作製するプロセスについて実験を行っている。以上のようにほぼ計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる2018年度は,残る金属担持中空粒子を作製し,有機物質の分解からその触媒活性を判断する。中空構造を活かして触媒活性を上げるには,できるだけ薄いシェルに表面ではなく中空内に多く金属を担持させることが効果的と考えられる。そこで,中空チタニア粒子を作製する溶液条件(アルコキシド,溶媒濃度,反応調整剤の量),インクジェットの吐出条件を検討し,さらに金属の還元析出方法についても適切な方法で実施する。あわせてシェルにおけるブルッカイト量を増加させるための重合条件について検討し,可能な限り含有量を増やす方法を検討する。結晶構造はXRDを用い,複合化状態はイオンミリングによって粒子断面を作り,SEM もしくはTEMで確認する。金属を複合化させた酸化チタン粒子の光学特性,光触媒反応を紫外-可視分光光度計で測定する。XRD,SEM等については,大学の共通設備を利用するので受益者負担が必要である。また,時期によっては利用者が多いため十分なマシンタイムが取れない場合がある。その場合は外注する可能性がある。 ピコリットル反応場として,インクジェット吐出液滴を主とし,いくつかの複合粒子の合成に成功してきたが,実用化に向けては量産が避けられない。これまで静電場を用いたノズルレスによるエマルション形成を量産方法の一つとして検討してきたが,比較的取り扱い易い系で行ってきたので,インクジェットプロセスで作製してきた複合粒子がこの静電場エマルションシステムで作製できるのかを確認する予定である。
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Research Products
(6 results)