2016 Fiscal Year Research-status Report
不確実性を有する離散型生産システムの統合的な意思決定支援環境の開発
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16K06844
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
橋爪 進 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (60242913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢嶌 智之 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80262864)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 離散事象システム / 不確実性 / クリティカルパス / ペトリネット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,不確実性を有する離散型生産システムを対象に,システム構成の最適設計手法,運用方策の最適化手法,異常診断法,制御系設計手法を開発し,離散型生産システムの設計・制御・運用に係る意思決定を支援するための統合的な意思決定支援環境の開発を行うことである.このなかで平成28年度は,システム構成の最適化手法の開発を行った.具体的には,生産システムのモデルとして,離散事象システムの定性モデルであるペトリネットに処理時間の不確実性を表す確率分布を導入したモデルを考え,そのもとでプロセス全体の完了時刻(平均とばらつき)を改善するための処理装置の構成を求める問題を定め,この問題に対する解法を開発した.処理工程が固定の場合(ペトリネットモデルの上で非決定性がない場合に対応)の解法についてはこれまでにいくつかの解法を提案したが,今年度は処理工程が変動する場合に拡張した問題について検討した.開発した解法は,クリティカルパスに含まれる確率の高いいくつかの処理装置を着目して改善し,それを繰り返すというヒューリスティックな近似解法であり,これにより精度良く解を求められるることを数値シミュレーションにより示した. また,平成28年度は,制御系設計手法についても少し検討を始めており,ペトリネットモデルをもとにコントローラの最小実現に関する検討を行い,あるクラスにおいて最適コントローラ構成のための方法を開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の計画は,不確実性を有する離散型生産システムを対象に,システム構成の最適設計手法の開発を行うことであった.これに対する評価は,以下のようである. ・生産システムの処理順序と処理時間および処理順序の不確実性を表すために,確率分布付きのペトリネットモデルを考え,そのもとでプロセス全体の完了時刻(平均とばらつき)を改善するための処理装置の構成を求める問題を定めた.ペトリネットモデルを用いることにより,処理順序の不確実性(処理工程が変動する場合;非決定性に対応する)を組み込むことができた. ・上で定めた問題はNP困難な組合せ最適化問題であり,生産システムが大規模・複雑化すると急速に解くことが困難になる.開発した解法は,クリティカルパスに含まれる確率の高い処理装置を着目して改善するという近似解法であり,現実的な時間内で精度良く解を求められることを数値シミュレーションにより示せた. 以上より,達成度は「おおむね順調に進展している」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画および平成28年度の実績およびその達成度より,平成29年度は以下のことを行う予定である. (1) システム構成の最適化手法:実績の欄で述べたように,システム構成に関する1つの最適化問題を定め,ヒューリスティックな近似解法を開発した.その近似解法は自前で計算機にインプリメントしなければならないが,もしその最適化問題が混合整数線形計画問題(MILP)として表現できれば汎用の最適化ツールを利用することができる.そこで,MILPとしての定式化について検討する. (2) 運用方策の最適化手法の開発:処理数や処理工程が変動する生産システムに対して,処理数や処理工程の変動とシステム内に滞留する製品数との因果関係をベイジアンネットワークで表し,それをもとに将来の状態を推定することによって製品の物流を制御する方法について検討する. (3) 異常診断法と異常回避制御器設計手法の開発:不確実性に関する情報を含んなペトリネットモデルをもとに,異常を診断する方法,ならびに検出した異常を回避するインターロックの構成法について検討する.
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Causes of Carryover |
当該年度はほぼ当初の予定通りに使用したものの,物品費が少し安く抑えられことなどから少額であるが次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は少額であり,次年度は当初の予定通りに使用する予定である.
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Research Products
(5 results)