2016 Fiscal Year Research-status Report
構造骨格がジスルフィド結合からなるシリカを用いた新型環境応答性カプセルの創製
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16K06846
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松根 英樹 九州大学, 工学研究院, 助教 (10380586)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジスルフィド結合 / シリカ / カプセル / 刺激応答性 / グルタチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,構造が全く新しい外部刺激応答性材料,すなわち骨格構造がジスルフィド結合や配位結合からなるシリカをDDS製剤のカプセル壁に利用することで,グルタチオン(GSH)などの外部刺激に応じて構造の維持と崩壊を制御できる刺激応答性シリカカプセルを開発することを目的とする. 平成28年度の当初の計画では,逆ミセル法を用いることによって,1次粒子同士がジスルフィド(SS)結合によって三次元的に架橋されたシリカ粒子を単分散なサイズで調製し,薬剤のモデルとなる蛍光性の色素分子を粒子内に分散させて内包させる方法を確立することが目標であった.当初の予定通り,実際に粒子を200ナノメールトルのサイズで単分散に調製するための条件を見出すことに成功した.また粒子内に蛍光色素を内包することに成功した.さらに,粒子の表面を化学修飾することによって水中で安定に分散させることができた.以上のようにして,当初の予定であった,細胞との相互作用の評価へ適用できる新規カプセルを調製することができた.そこで,平成29年度前半に予定していた,細胞との相互作用を前倒しで行った.培養中の細胞に粒子を加え,顕微鏡観察によって粒子の取り込み挙動を追跡した.その結果,数時間後に細胞内で色素を放出する様子が観察できた.これは色素内包粒子が細胞内に取り込まれ,細胞内のGSHと反応して構造が徐々に崩壊し,内包した色素を放出したためと考えられる.以上から,刺激応答性の新規シリカカプセルの開発を行うことができた.さらに色素の内包法を検討し,より薬剤を高担持量で内包できるコア-シェル型のカプセルの調製を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,ジスルフィド結合を構造骨格に持つシリカ粒子を刺激応答性薬剤内包カプセルへ応用する方法論を見出すことを目的としていた.そのため主に,「①シリカ粒子の粒径制御と単分散化」,「②粒子内部への薬剤の内包」,「③表面修飾による水への分散性向上」を遂行することを目標としていた.「①シリカ粒子の粒径制御と単分散化」においては,逆ミセルの水/界面活性剤比(W/S)を調節することにより,目標粒径であるサイズ200 nmで単分散な粒子を調製することができた.「②粒子内部への薬剤の内包」においては,構造骨格を形成するためのチオール基を有するシランカップリング剤とともに他の官能基,いわゆる薬剤のモデル分子である色素(フルオロセイン)と結合する官能基を持つカップリング剤を共縮合させて粒子を調製することにより,ほぼ100%の取り込み効率で色素を内包させることに成功した.「③表面修飾による水への分散性向上」も修飾剤を適切に選択することによって高塩濃度の水溶液にも分散する粒子を調製することに成功した.さらに,当初,平成29年度に検討開始を予定していた,粒子と細胞との相互作用の評価について,それを実行するための細胞培養の設備の構築および顕微鏡による観察や評価方法の確立を行った.また,実際に粒子と細胞の相互作用を定性的に調べることができ,粒子が細胞へ取り込まれる挙動を追跡し,細胞内で粒子が崩壊する様子を観察することができた.以上から,おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,平成28年度に引き続きカプセルの高性能化を進める.カプセル調製に関しては主に,①コア-シェル型のカプセルの調製法の確立,②より迅速な応答性のカプセル材の探索を中心に研究を遂行する.また,調製したカプセルを随時細胞に作用させて,細胞との相互作用や細胞内での反応を追跡して,実際に刺激応答性のカプセルとして利用できるかを調べる.これらの知見を収集した上で平成30年度にカプセルの大量合成に向けた方法論の確立にも取り掛かる.
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Causes of Carryover |
支払い前倒し請求の制度を利用して,平成28年度の交付申請書の当初予算額に加えて平成29年度の予算から\1,000,000を前倒しで交付していただいた.この前倒しの分のうち,ほぼ半分を光学顕微鏡や分光器の部品および消耗品の購入に充てて細胞の観察や粒子との相互作用の評価の高精度化を図る予定であった.しかし,その整備が遅れており,平成28年度内に終えることができなかった.その結果,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額は,平成29年度の物品費に利用する予定である.細胞観察や細胞と粒子の相互作用評価のために光学顕微鏡の整備や分光器の部品購入,消耗品購入の予算として平成29年度内に使用する予定である.
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Research Products
(2 results)