2016 Fiscal Year Research-status Report
ファインバブルによる特異的な超音波分解増強効果を用いた難分解性医薬品の排水処理
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16K06849
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
村上 能規 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (70293256)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロバブル / 超音波 / ラジカル / 分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
超音波によるOHラジカルの生成が水中の溶存気体の種類により変化することが知られている。そこで、マイクロバブル中に含まれる気体の種類をKr,Ar,O2,Heの4種類で比較することで、マイクロバブル/超音波併用系で生成するOHラジカルが超音波キャビテーションに由来するものかの確認実験を行った。OHラジカルの生成量に関しては、超音波強度測定としてよく用いられる0.1 M KI水溶液からのI3-生成量の比較から行った。その結果、I3-の生成量はKr>Ar>O2>Heの順番となり、これまでよく知られている溶存気体の違いによる超音波キャビテーション効果の序列と同じとなり、マイクロバブル/超音波併用系によるラジカル生成、有機物分解がキャビテーション効果である事を裏付ける結果となった。超音波周波数を100kHzで同様の実験を行ったが、I3-の生成は確認できず、マイクロバブル/超音波併用系によるキャビテーションが特有の周波数において起こることも確認できた。このように、マイクロバブル/超音波併用系において、KI法によるI3-の生成量にマイクロバブルに含有される気体の種類で変化することが分かった。そこで、有機物の分解速度がマイクロバブル含有気体の種類で変化するかを調べた。この実験においては、有機物のMB表面への吸着効果による影響を避けるために、本研究助成で新規に購入した全炭素計による有機炭素(TOC)量の減少による分解を評価した。その結果、TOCによる分解率の順番が、Kr>Ar>Heの順番となり、KI法の結果と対応した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超音波分解において、マイクロバブルの効果が単なる気体の溶解に基づくものなのか、超音波キャビテーションを誘起するからなのか、よくわかっていなかった。そこで、マイクロバブルに含有される気体の違いにより、生成するラジカル量が変化することを確認し、マイクロバブルによる超音波分解の左側の効果が気泡圧壊、キャビテーションに由来するものであることを明らかにすることができた。さらに、医薬品の代表として、サリチル酸を用い、この研究助成で購入した、全有機炭素計(TOC)で分解速度を測定することができた。ただ、その分解速度の再現性には問題があるが、分解の速さは、マイクロバブル中の気体の違いで変わる様子が確認でき、超音波キャビテーションと同様の傾向を示している。つまり、TOC系においても、超音波分解によるマイクロバブルの効果を明らかにすることに成功した。TOC測定に使用した薬品は医薬品処理を意識したサリチル酸である。まだ、それ以外のものは試しておらず、今後、検討が必要であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
KI法という方法でOHラジカルを検出したが、次はクマリン蛍光プローブ法、テレフタル酸蛍光プローブ法で今度は検出を試みる。これまでの研究成果より、マイクロバブル気泡がラジカルの生成の中心となっていることが予想されているが、その確認ができていない。そこで、超音波によるラジカル生成で有名なルミノール化学発光を用いた解析手法でOHラジカルの発生場所が間違いなく、気泡の存在する領域であるかを確認し、その効率の向上と気泡の位置関係等を確認する。このような基礎的な知見に加え、さらに、医薬品分解研究としてふさわしい各種試薬を購入し、その分解をTOCで測定、超音波/マイクロバブル分解系が医薬品処理において有効な手法であることを確認する。
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