2017 Fiscal Year Research-status Report
高難度選択水酸化反応を触媒する新規遷移金属錯体含有固体触媒の開発
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16K06855
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山口 修平 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (50397494)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 選択的水酸化反応 / 遷移金属錯体 / ゼオライト / ベンゼン酸化 / 過酸化水素 / カチオン交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,鉄‐ビピリジン錯体内包ゼオライト触媒の電荷補償のために存在するNa+カチオン部分を他の金属カチオンに交換した鉄錯体内包カチオン交換ゼオライト触媒を調製し,活性部位近傍のカチオンがベンゼン酸化活性に与える影響について調査した.水溶媒中で種々のカチオン交換ゼオライト触媒を用いた過酸化水素を酸化剤とするベンゼンの酸化反応を行った. どの触媒を用いても主生成物としてフェノールが生成した. 交換したカチオンが1価の金属イオンの場合, Na+よりK+, Cs+の方が, 2価の場合, Mg2+よりCa2+の方が高い活性を示した.この触媒活性の序列は, 水和イオン半径の序列と概ね一致していることから, カチオンの水和イオン半径が小さくなると触媒中の反応場が広くなりベンゼン酸化が促進されることが示唆された.また,鉄錯体内包カチオン交換ゼオライト触媒のカチオン部分をテトラメチルアンモニウム,テトラブチルアンモニウムなどの有機カチオンに交換することで,ベンゼン酸化反応が向上することが明らかとなった. また、鉄‐ビピリジン錯体の代わりに,鉄‐フェナントロリン錯体や鉄‐ターピリジン錯体をゼオライトに内包した触媒を新たに調製し,過酸化水素を酸化剤として環状炭化水素類(シクロヘキサン,シクロヘキセン,ベンゼン)の酸化反応を行ったところ,いずれも対応するアルコール類が選択的に生成することが明らかとなった.上記の検討から,鉄‐ターピリジン錯体内包ゼオライト触媒がベンゼン酸化反応に対して最も高い触媒活性とフェノール選択性を示すことが明らかとなった.さらに,もっともπ-電子系の小さいビピリジン配位子を有する鉄錯体内包触媒を基準とすると,比較的広いπ-電子系を持つフェナントロリンやターピリジン配位子を有する触媒では,基質のπ-電子性が高くなるにつれて活性が向上することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の主な計画の「②鉄錯体内包ゼオライト触媒の触媒活性部位にある鉄錯体の最適化」に関して,鉄‐ビピリジン錯体の代わりに鉄‐フェナントロリン錯体や鉄‐ターピリジン錯体をゼオライトに内包した触媒を調製し,ベンゼンの酸化反応を行ったところ,鉄‐ターピリジン錯体を内包した触媒が触媒活性やフェノール選択性が最も高くなることを明らかにしている.また,これらの触媒を用いて「④ベンゼン以外の基質を用いた酸化反応」として,ベンゼンと同様な六員環炭化水素類のシクロヘキサンとシクロヘキセンの酸化反応を実施し,配位子と基質との関係性について検討を行った. また,「③鉄錯体内包ゼオライト触媒の生成物捕捉部位にあるカチオンの最適化」に関して,鉄‐ビピリジン錯体内包ゼオライト触媒の電荷補償のために存在するNa+カチオン部分を他の金属カチオンや有機カチオンに交換した鉄錯体内包カチオン交換ゼオライト触媒を調製し,活性部位近傍のカチオンがベンゼン酸化活性に与える影響について調査した.水溶媒中でベンゼン酸化反応を行ったところ,アルカリ金属およびアルカリ土類金属イオンに交換した触媒では,各金属イオンに水が配位し,水和イオン半径が小さいほどベンゼン酸化活性が高くなることがわかった.また,有機カチオンに交換することでベンゼン酸化活性が向上した.有機カチオン導入による疎水場の形成が活性向上の原因であると考えている. 以上のように,本申請課題は,当初の目的通りに進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究方針である「②遷移金属錯体内包ゼオライト触媒の触媒活性部位にある鉄錯体の最適化」,「③遷移金属錯体内包ゼオライト触媒の生成物捕捉部位にあるカチオンの最適化」に重点を置いて検討を続行する.②の鉄錯体の最適化は,鉄‐ビピリジン錯体と配位環境を大きく変えないようにフェナントロリンやターピリジンを導入した配位飽和な鉄錯体を用いていたが,トリス(ピリジルメチル)アミン配位子などを用いて,配位不飽和な鉄錯体を導入し,高原子価オキソ種などの活性種を形成する鉄錯体をゼオライトに内包した触媒を調製し,ベンゼンをはじめとする種々の基質の酸化反応を検討する.また,鉄錯体以外の銅錯体やニッケル錯体をゼオライトに内包した触媒も調製し,順次触媒反応へ展開する.上記の新規触媒で反応活性の高いものについて,③のカチオン交換ゼオライトを用いて,更なる反応活性及び選択性の向上を目指す. 平成30年度からは,これまでゼオライトを担体としていたものを,層状化合物であるモンモリロナイトなどを用い,各種遷移金属錯体を導入したモンモリロナイト触媒を調製し,触媒の詳細なキャラクタリゼーションや,それらを用いたベンゼン酸化反応を検討する予定である.
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Causes of Carryover |
(理由)薬品類や各種標準ガスや調製用器具といった消耗品の費用を今年度は少し抑えることができたため.
(使用計画)平成30年度の研究費は,薬品類や各種標準ガスや調製用器具といった消耗品費,学会などへの成果報告や研究打ち合わせのための旅費および愛媛大学の共通機器の使用料などに使用する予定である.
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Research Products
(12 results)