2017 Fiscal Year Research-status Report
収差補正電子顕微鏡を用いたヘテロポリ酸触媒のキャラクタリゼーションと設計
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16K06863
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
日吉 範人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ付 (50415733)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘテロポリ酸 / 触媒 / 電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、走査透過電子顕微鏡(STEM)による固体ヘテロポリ酸触媒の局所構造の評価手法を確立し、原子分解能観察に基づいたヘテロポリ酸分子の精密な配列制御を行うことで、優れた触媒の開発につなげることを目的とする。平成29年度は、ヘテロポリ酸塩ナノシートの合成とSTEMによる構造解析を行った。具体的には、ケギン型ヘテロポリ酸の一種であるケイタングステン酸、セシウム塩、および、有機アミンを含む水溶液の気液界面に、ケイタングステン塩の結晶が二次元的に成長し、マイクロメートルオーダーの幅とシングルナノメートルの薄さを有するヘテロポリ酸塩ナノシートが生成する条件を見出した。さらに、得られたヘテロポリ酸塩ナノシートをSTEMで構造解析するための観察試料作製法および観察条件の検討を行い、原子レベルでの構造解析に成功した。STEMによる観察の結果、ヘテロポリ酸塩ナノシートの結晶構造は、既知のケイタングステン酸セシウムと同一であったが、厚さ方向がその結晶構造の1単位格子分(ケイタングステン酸が2分子分)であることが明らかとなった。さらに、ナノシート中のヘテロポリ酸分子の欠損部分や、1単位格子以上にヘテロポリ酸分子が積層した部分をSTEMにより可視化し、ヘテロポリ酸分子の詳細な配列構造を明らかにした。また、ヘテロポリ酸塩ナノシートの熱安定性を調べ、空気中573 Kまでの加熱によっても形態や構造に変化がないことを明らかにした。本研究で得られたヘテロポリ酸塩ナノシートの優れた耐熱性は、ヘテロポリ酸アニオンが無機カチオンで連結されていることに起因しており、有機物で構造が保たれている従来のヘテロポリ酸薄膜とは大きく異なる特性である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘテロポリ酸分子の配列制御と原子分解能観察に成功し、ヘテロポリ酸塩ナノシートという新規素材を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘテロポリ酸ナノシートの合成条件の検討や生成過程の解明に取り組むとともに、ヘテロポリ酸塩ナノシートを触媒等に利用できるように、デバイス化に取り組む。
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Causes of Carryover |
装置の購入を予定したが、その選定に時間を要したため、H29年度に残額が出た。H30年度に当該装置を購入する。
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Research Products
(1 results)