2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16K06866
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 誠吾 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10205924)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糸状菌 / 高濃度培養 / 高分子電解質 / 物質移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
糸状菌は工業的に重要であり、高濃度培養法が開発されれば生産性向上に有効である。しかし菌糸が網目状に増殖するため物質移動が律速となり、高濃度培養は達成されていない。本研究は高分子電解質を用いた新たな手法により糸状菌の高濃度培養系を開発し、糸状菌利用工業に資する知見を提供することを目的とした。 各種合成・天然高分子を用いて糸状菌 Aspergillus niger IFO 31012の高濃度菌糸集合体の作成を試みたところ、陽イオン高分子電解質であるトリメチルグリコールキトサン(TGCI)と陰イオン高分子電解質であるポリビニル硫酸カリウム(KPVS)を同量ずつ添加した場合に、良好な菌糸集合体が形成した。TGCIを単独で添加しても集合体が形成されないことから、糸状菌表面の負電荷とTGCIとが結合するのではなく、糸状菌表面電荷以上のTGCIとKPVSが同量存在することにより両電解質がポリエレクトリックコンプレックスを形成してゲル化し、ゲルが菌糸を包み込むことで集合体が形成されると推定した。 形成された菌糸集合体の表面に糸菌が露出していれば菌糸同士が絡み合い、培養液の流動性が悪くなる。高分子電解質表面から菌糸が露出しないTGCIおよびKPVSの添加量を菌糸集合体の沈降速度から検討した結果、菌糸量に対するTGCIおよびKPVSの添加量が50%を超えると菌糸集合体の干渉が無くなり、遊離菌糸と比較して十分な沈降速度が得られる50%を最適添加量とした。 菌糸集合体は菌糸をゲルが包み込んでいることから、菌糸同士が付着している状態と比較して菌糸間の物質移動が良好と期待される。遊離菌糸と高分子ゲル菌糸集合体とのグルコースの拡散係数を測定し比較した結果、遊離菌糸の拡散係数が4.45×10-8(m2/s)に対し高分子ゲル菌糸集合体のそれは6.15×10-8(m2/s)と約1.4倍大きくなった。
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