2016 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子発現プロファイリングによる高効率抗がん剤生産バイオプロセスの開発
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16K06879
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
山本 進二郎 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (40262307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮坂 均 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (60451283)
林 修平 崇城大学, 生物生命学部, 助教 (30389522)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タキサン類 / パクリタキセル / カルス培養 / イオン液体 / エリシター |
Outline of Annual Research Achievements |
「タキサン類の生合成における代謝経路と遺伝子発現の調査」を検討した。パクリタキセルの合成には、前駆体である10-デアセチルバカチンIIIやバカチンIIIが重要である。タキサン類の生合成には酵素の遺伝子発現が重要なので、これらの発現プロファイルの文献調査を進めながら、実験サンプル中のmRNA量の分析を行ったが、mRNA量が少量であったため、解析することができなかった。実験サンプルの分析量を大きくすることによって遺伝子発現の解析が可能と考えている。 「化学物質添加培養におけるカルスの増殖と遺伝子発現に関する実験的検討」を行った。これに関しては、疎水性のイオン液体を含むカルス培養を行って、カルス増殖やタキサン類生産に及ぼすイオン液体の影響を検討した。イオン液体としては、1-hexyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphateを使った。イオン液体を含む培養でのカルス増殖は、イオン液体を含まないコントロール培養と比べて同等であった。タキサン類生産は、コントロール培養に比べてイオン液体を含む培養で顕著に増加することが見出された。生産されるタキサン類がカルス増殖を阻害するため、通常の培養ではカルスの増殖速度が低下する。疎水的なイオン液体のため、疎水的なタキサン類が疎水性相互作用によってイオン液体に移動してタキサン類の阻害作用が軽減され、カルス増殖の阻害が抑制されたと考えられる。さらに、イオン液体がタキサン類に移動したため、タキサン類の生産能力が向上してこれらの生産量が向上したと考えられる。さらに、エリシターであるジャスモン酸メチル(MJ)をイオン液体―培地の二相系培養に利用したところ、タキサン類の顕著な合成が観察され、MJとイオン液体の併用がタキサン類の培養生産に有効であることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオン液体1-hexyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphateを含むカルス培養でのタキサン類の生産量は、イオン液体を含まないコントロール培養に比べて高いことが見出された。さらに、エリシターであるジャスモン酸メチル(MJ)をイオン液体―培地の二相系培養に利用したところ、タキサン類の顕著な合成量が観察され、MJとイオン液体の併用がタキサン類の培養生産に有効であることが見出された。これを論文としてまとめ、専門雑誌に投稿したところ、受理され、「Production of taxanes in an ionic liquid-medium two phase culture system」のタイトルで掲載されている。このため進捗状況は良好と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
カルス増殖に対するパクリタキセルの阻害作用は知られているが、その他のタキサン類に関しては不明確なので、タキサン類濃度が増殖阻害に与える影響(生成物阻害)を検討する。昨年度購入した、微量の測定が可能なセミミクロ天秤を使って低いタキサン類濃度の溶液を調製して、実験を行う予定である。 これまでの研究から、有効性が明らかな疎水性のイオン液体を使うイオン液体-培地二相系でのカルス培養を行い、カルス増殖とタキサン類生産に及ぼすイオン液体の添加量の影響を検討する。イオン液体としては1-hexyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphateを使うが、新規に購入できるイオン液体も試みる。さらに、ジャスモン酸メチル(MJ)や5-アミノレブリン酸(5-ALA)などを添加する培養も行い、最適なイオン液体添加量やMJ濃度、5-ALA濃度を見出す。何れの培養においてもタキサン類の生合成に関与する遺伝子発現の状態も観察する。また、カルス増殖においてMJの添加時期が重要なことが知られているので、培養開始後の最適なMJ添加時間も検討して、タキサン類生産の効率化を図る。培地中やイオン液体中へのタキサン類の蓄積がカルス増殖を阻害するが、有機溶媒の交換頻度がカルス増殖やパクリタキセル合成に有効な知見を得ているので、使用済みのイオン液体や培地を適宜新鮮なイオン液体や培地に交換してタキサン類を抽出する培養操作の有用性も検討する。 遺伝子発現プロファイルからタキサン類合成に有効な遺伝子を調べ、有用性のあるカルスの選択も検討する。
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