2016 Fiscal Year Research-status Report
並行複発酵に最適なキシロース発酵性酵母創製に向けた基盤研究
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16K06881
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松鹿 昭則 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 主任研究員 (90443225)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 耐熱性酵母 / 高温耐性遺伝子 / ゲノムDNAライブラリー / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、耐熱性酵母Kluyveromyces marxianus DMB1株の耐熱性機構の解明を目的に、DMB1から高温耐性遺伝子の単離を試みた。そのために、まずDMB1株のゲノムDNAライブラリー(DMB1株から抽出したゲノムDNAを切断後、5kb以上のゲノム断片をマルチコピーベクターpPGKに挿入して構築)を、Saccharomyces cerevisiae BY4742株に形質転換し(ゲノムカバー率50倍以上)、41℃で培養した。尚、この温度ではDMB1株は生育できるが、BY4742株は生育が著しく低下することを確認した。その結果、生育が良好な高温耐性酵母として5コロニー取得し、この中の1株からプラスミド(pPGK-KmClone1と命名)を単離し、再度BY4742株へ形質転換した株が、41℃において、ゲノム断片を含まない対照株よりも優れた増殖を示すことを確認した。 シークエンス解析によりpPGK-KmClone1に挿入されたゲノムDNAの塩基配列を決定した結果、2種類のコーディング領域と推定される塩基配列が含まれていることを確認した。これらの推定遺伝子のアミノ酸配列を基に他の出芽酵母種とのホモロジー検索を実施したところ、一方はS. cerevisiae由来のタンパク質と60%の高い相同性を示したが、もう一方は30%以上の相同性を示すタンパク質は検出されなかった。pPGK-KmClone1上に含まれる2種類の遺伝子のうち、どちらの遺伝子が高温耐性の機能に寄与するかを検討するために、それぞれの遺伝子のクローニングを行い、BY4742株に形質転換した。高温耐性能を調べた結果、相同性の低いタンパク質をコードする遺伝子が高温耐性に寄与していることが判明した。高温耐性遺伝子発現株は対照株と比べて、41℃において、最大OD差が2.2倍増加し、良好に増殖することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画であるDMB1株から高温耐性遺伝子の単離において、DMB1株のゲノムDNAライブラリーをS. cerevisiaeの実験株に導入し、DMB1株が生育可能かつS. cerevisiaeが生育できない高温域(41℃)で生育可能な高温耐性株を単離し、高温耐性に寄与するDMB1株由来の遺伝子を同定した。 当該年度の研究計画である高温感受性DMB1株の取得については、紫外線照射や薬剤処理によりDMB1株に突然変異を誘導して高温感受性変異体を単離することを複数回試みたが、現在までのところ高温感受性変異体は単離できていない。そのため、今回の手法で高温感受性変異体を単離するのは困難との結論に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、DMB1株の耐熱性分子機構を解明するために、引き続きDMB1株由来の高温耐性遺伝子の機能解析を行う。また、S. cerevisiaeの知見を応用したDMB1由来遺伝子の発現解析も実施し、酵母間で耐熱性の仕組みが保存されているか否かを検証する。 DMB1株に導入するキシロース代謝系酵素群の耐熱化の課題においては、キシロース代謝系酵素変異体の作製に着手し、耐熱性が向上した変異体(改変型酵素)の作製を試みる。得られた改変型酵素については、DMB1株に導入し、高温下での発酵性を評価する。 さらに、グルコース抑制解除変異体やキシロースの取り込みが強化される遺伝子のスクリーニング等も試み、DMB1株のキシロース代謝制御機構の解析を進める。
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Causes of Carryover |
当該年度において、本科研費テーマに関して、学会発表や論文投稿する予定であったが、単離した高温耐性遺伝子が、予想以上に簡易かつ利便性の良く、酵母の高温耐性を付与できるツールであったため、優先して特許出願の準備を進めた。そのため、計画を変更し、学会発表や論文投稿の時期を後に移行することとしたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、学会発表と論文投稿を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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