2017 Fiscal Year Research-status Report
Scientific research for development of xylose-fermenting yeast suitable for simultaneous saccharification and fermentation (SSF)
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16K06881
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松鹿 昭則 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (90443225)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 耐熱性酵母 / 高温耐性遺伝子 / ゲノムDNAライブラリー / スクリーニング / 薬剤耐性 / キシロース発酵 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、昨年度にゲノムDNAライブラリーのスクリーニングにより単離したKluyveromyces marxianus DMB1株由来の高温耐性遺伝子について、Saccharomyces cerevisiae BY4742株に形質転換することにより、高温耐性(DMB1では生育可能でBY4742株では生育が著しく低下する41℃の高温条件下において良好な生育を示す)のみならず、酵母の増殖に悪影響を与える各種薬剤に対しても耐性を示すことを確認した。すなわち、高温耐性遺伝子を形質転換したSaccharomyces cerevisiae株は、1.5mM 過酸化水素、0.3% 酢酸、0.1% 塩酸、2M 塩化ナトリウム、15mM フルフラール、及び8% エタノールを含む各寒天培地において、高温耐性遺伝子発現株は対照株と比較して良好な生育を示した。 また、41℃で嫌気的に培養することにより、高温耐性遺伝子発現株は対照株と比べてグルコースを1.6倍多く消費し、エタノールを1.7倍多く生産した。このように、Saccharomyces cerevisiaeにおいてKluyveromyces marxianus DMB1株由来の高温耐性遺伝子を発現させることで、高温条件下でのエタノール発酵性を向上させることが可能であることが明らかとなった。 さらに、メタボローム解析を実施し、キシロース発酵時にDMB1株の代謝物がどのように変動するのか調べた。その結果、他の出芽酵母株と比較して、ペントースリン酸経路における複数の代謝物が増加した一方、細胞内のアミノ酸やピルビン酸が著しく減少することが判明し、DMB1株のキシロース発酵時の律速段階を特定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に単離したDMB1株由来の高温耐性遺伝子について、当該年度でさらに解析を進めた結果、高温耐性のみならず過酸化水素、酢酸、塩酸、塩化ナトリウム、フルフラール、エタノールにも耐性を示すという予期しない結果を得たため、こちらの研究計画に少し多めの時間を費やした。 一方で、当該年度の研究計画であるDMB1株のメタボローム解析やキシロース代謝系酵素の耐熱化なども並行して進めており、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、耐熱化したキシロース代謝系酵素をDMB1株に導入し、キシロースや糖化液を基質とした高温下での発酵性を評価する。 また、DMB1株を対象としてグルコース抑制解除変異体の探索や、DMB1株のゲノムDNAライブラリーの中から、キシロースを含む培地で増殖を早める輸送体遺伝子のスクリーニングを試みる。 これらの結果から、高温条件下でも効率良くキシロースをエタノールに変換できる次世代型の耐熱性酵母を開発し、並行複発酵の最適なツールとしての展開を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由)当該年度において、本科研費テーマに関して学会発表や論文投稿する予定であったが、単離した高温耐性遺伝子が、高温耐性のみならず増殖に悪影響を及ぼす薬剤に対しても耐性をしますことが確認できたため、先行して国内優先権主張出願を進めた。そのため、計画を変更し、学会発表や論文投稿の時期を後に移行することとしたため、未使用額が生じた。
(使用計画)上記の理由により、学会発表と論文発表は次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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