2016 Fiscal Year Research-status Report
先進的体感型機関シミュレータを用いた故障検知能力の向上に関する研究
Project/Area Number |
16K06904
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井川 博雅 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (20184377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 誠 神戸大学, 海事科学研究科, 講師 (30379341)
段 智久 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (80314516)
伊丹 良治 神戸大学, 海事科学研究科, 特命教授 (40783965)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 機関管理 / 聴音棒 / シミュレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,ダミーヘッドを導入し,聴音棒を用いて,電動ポンプ軸受の音響・振動を記録・分析した。ダミーヘッドは,人間と同じ構造の頭部および耳介部を持ち,軟骨で囲まれた耳道壁面の振動による軟骨伝導領域の放射音成分にも充分適用できると考えられるものを導入した。また,実験に用いた聴音棒は,神戸大学練習船深江丸にて実際に用いられているものを使用した。実験に先立ち,聴音棒に歪みゲージを貼り付け,機関士経験者に依頼して聴音棒を自身の耳に押しつけて貰い,聴音棒の押付力を確認した。これは,聴音棒を耳介部に押しつける力により,聞こえ方が異なってくる可能性を考慮したからである。以下の実験においては,この押付力を確認しながら測定した。 続いて,上記ダミーヘッドを使用して,電動ポンプ軸受部の聴音棒を介した音響・振動を記録・解析した。まず,実験室における騒音の小さい環境下で実施し,音響データにはポンプ回転数1730 rpmの高調波成分のピーク値が多く含まれていることがわかった。次に神戸大学練習船深江丸における騒音が大きい環境下で実施した結果,以下のことが明らかになった。まず,発電機のみ運転中はポンプおよび発電機の回転数(それぞれ、1740 rpm、1200rpm)の高調波周波数(代表的例としてポンプ29Hz、88Hz、発電機40Hz等)にピークが見られた。次に,主機関運転中は上記発電機に加え,主機回転数(R/U時:675rpm、S/B時:500rpm)の高調波周波数(例えば代表的例としてR/U時34Hz等、S/B時16Hz等)にピークが見られた。これは,発電機や主機の振動が聴音棒を介してダミーヘッドの耳介モデルに伝わっていることを示唆している。ただし,何れの条件においてもポンプ回転数の高調波が大きい。 以上のように,ポンプ正常時の聴音棒を介して耳介部に伝わる音響・振動成分を計測・分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度の実施計画は,ダミーヘッドを用いて,聴音棒を介して耳介部に伝わる音響・振動成分を,ポンプ正常時・異常時において計測・分析することであったが,正常時は計測・分析できたものの,異常時におけるそれが実施できなかったので,「やや遅れている」と自己評価している。この遅れについては,ポンプ異常時における計測・分析を,次年度予定している先進的体感型シミュレータの構築と並行して作業することで,充分回復可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の推進方策は,基本的には提出済みの研究計画調書に記載した実施計画に従う予定である。本研究は全体として「やや遅れている」が,平成29年度は未だ達成できていないポンプ異常時における聴音棒を介して耳介部に伝わる音響・振動成分の計測・分析と,先進的体感型シミュレータの構築を,並行して作業することで,遅れを取り戻せると考えている。前者を実施するにあたっては,人工的に劣化した軸受け部を作成し,この軸受け部を用いて計測した振動・音響を神戸大学練習船深江丸で取得済みの音響・振動に付加することで異常時の振動・音響を作成し,先進的体感型シミュレータに反映させる予定である。後者においては,模擬調音棒を作成するとともに,神戸大学所有の舶用機関プラントシミュレータMEPSにおいて異常を起こすポンプについて検討して最も効果的と思われるポンプを決定し,事故シナリオを構築してMEPSに組み込む予定である。
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