2017 Fiscal Year Research-status Report
無動力で風追従する新しい係留方式を用いた浮体式洋上風力発電に係る研究
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16K06911
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
二瓶 泰範 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00470055)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海洋資源 / エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は風や流れの中で一点係留式浮体式風車がどのような挙動を示すのかに焦点を当て研究を実施した。海流という流れ場を再現する為に実験は回流水槽を用い、そこに送風機を設置して風・流れ共存場の海象を模擬し試験を実施した。浮体式風車の浮体模型は2種類用いた。一つ目はSPAR式である。もう一つはセミサブ式である。この2種類の浮体式風車モデルを緊張係留されたブイに係留した一点係留方式浮体式風車モデルを本実験では用いた。SPAR式モデルは浮体側の係留点とブイの係留点との距離による挙動の違いを調べるために2種類(SPAR-short型、SPAR-long型)を用意した。実験における風の条件は、風車が定格で発電している際の風条件を模擬している。また、流れの条件は実海域で3knot程度を模擬したものである。風と流れは正対している条件下での実験を行った。 風だけの条件であるとき、セミサブ型は回頭時間が非常に長くなることが分かった。3種の模型で比較すると、実機換算にして、SPAR-longモデルは2分35秒の正対時間を、SPAR-shortモデルは1分38秒の正対時間を、セミサブモデルは6分35秒の正対時間を要することが分かった。これは風車がアップウインドの状態から風圧のみでダウンウィンドになるために必要な時間である。風と流れの共存場における実験では、セミサブは流れの影響を大きく受けることがあり、流れに追従しやすいという結果を得た。風車を支持する浮体を出来るだけコンパクトにし、流れの影響を受けにくい浮体構造にすることが求められる。SPAR-shortは流れと風の共存場において長周期のふれ回り不安定挙動が生じることが分かった。この現象は浮体式風車の構造に与える影響がとても大きいと予想される。しかし、SPAR-longは同条件であってもこのような現象は確認されなかった。すなわちSPAR-long型によりこの長周期不安定挙動を解消することができることが分かった。海域の条件に合わせてSPAR-short、SPAR-long、セミサブ型を選択することが望ましい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一点係留方式を採用した浮体式洋上風車の様々な環境因子の中での挙動を明らかにすることができた。これまでは風の中だけでの実験や実海域試験が主であった。しかし、5MW級モデル風車の1/200スケール模型という非常に小さな浮体式風車模型を開発することができた為、回流水槽の中で流れと風の影響による一点係留式浮体式風車の挙動を詳細に把握できたことは大きな成果である。さらに、SPAR-short、SPAR-long、セミサブといったいくつかの模型による違いを系統的に把握できたことも大きな成果である。シミュレーションベースによる研究は他機間でも少しずつ成果が報告されてきているものの、我々のように流れと風の共存場で精巧な実験模型を通しての実験結果は報告されてきていない。一点係留式浮体式風車の大きな懸念材料は海流という流れの中での挙動である。その影響について詳細に調査した研究成果が挙げられたと考えている。 SPAR-shortの浮体式風車は風と流れの正対する条件下で不安定な長周期動揺が観察された。このような現象が継続して起きると風車に大きな構造的負担を強いることになる。この改善策として考えたSPAR-longは、その点このような不安定な長周期動揺が観察されないことが分かった。流れと風の中での時系列シミュレーションプログラムを構築しこの物理的メカニズムについても考察することができた。一方、セミサブ型は流れの影響を大きく受け、風に追従できないことがあることが分かったことも本年度の成果として挙げられる。浮体のコンパクト化を図り、流れの影響を受けにくくすることが、一点係留方式のセミサブ型浮体式風車には強く求められることが分かった。 以上述べたように、一点係留式浮体式風車について、これまで明らかにされてこなかった風と流れの中での挙動を本年度は初めて明らかにすることが出来た。研究の進捗としては順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に一点係留式浮体式洋上風車の振れ回り運動を解析するための時系列シミュレーションプログラムを構築した。今後、精度を向上させる必要があると考えている。具体的には、風車に生じる荷重を再検討する必要がある。特に、風車に生じる横力にも着目する必要があると考えている。風車は回転するため、その回転力により風向に対し垂直の方向に横力が生じ、回頭に影響を及ぼすことが分かってきた。計算シミュレーションの精度を向上させるために、これまであまり着目されてこなかった風車横力の荷重について調査していく必要がある。 平成29年度に実施されたセミサブ型を用いた一点係留浮体式風車は流れの影響を大きく受けて風に追従しにくいということも既に述べた通り明らかにした。しかし、この改善策についてはまだ分かってない。平成30年度はセミサブ型で風追従し易い形状について検討を進めていく必要があろうかと思う。この流れの影響を調査する為には、浮体に作用する流体力を調べる必要がある。現状、古くから調べられている抗力等の流体力データベースを用いている。しかし、セミサブ型浮体はコラム間の流体干渉が大きいため、実験によりこれを調査しデータベースを作成する必要性がある。 数値計算シミュレーションの精度が向上したところで発電性能について調査を行う。実際の風力発電では風向と風車向きとの偏差が大きい場合は発電を行わないのが一般的である。破損等が生じる可能性があるからである。平成30年度は、このような風車と風向との偏差が生じていたり、実際に回頭中の場合であって発電できない場合も考慮した数値計算シミュレーションを実施したいと考えている。SPAR-short、SPAR-long、セミサブ型は回頭性能に大きな違いがあるし、潮流の影響が大きいことも実験では確認されているため発電には大きな差が生じるであろうと考えている。平成30年度にこの発電量の差について詳細に調査することを実施する。
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Causes of Carryover |
次年度、浮体の流体力計測をする必要が生じた。その計測の為の実験材料費用として使用する必要性が生じた。
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Research Products
(12 results)