2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K06931
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
内田 悦生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40185020)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 花崗岩類 / タイ / カンボジア / イオン交換平衡実験 / 硫砒鉄鉱 / 輝コバルト鉱 / 超臨界熱水条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度においては、タイおよびカンボジアに産する花崗岩類に対して野外調査を行なうとともに、2種類の硫化鉱物を対象として超臨界条件下におけるイオン交換平衡実験を行なった。 タイに産する花崗岩類の野外調査では、今までに行なってきた調査に対する補足的な意味を持ち、今までに調査を行なっていなかったチェンマイ付近に産する中部花崗岩類とチョンブリー東方に産する東部花崗岩類に対して調査を行なった。採取した花崗岩試料に対しては、偏光顕微鏡による薄片観察、全岩化学組成分析、鉱物化学組成分析を行ない、データの蓄積を行なった。 カンボジアに産する花崗岩類の調査では、北東部に産する塩基性岩を含む7岩体に対して調査を行なった。採取した試料に対し、偏光顕微鏡による薄片観察、全岩化学組成分析、鉱物化学組成分析、Sr-Nd-Pb同位体分析を行なった。調査および各種分析結果から、調査した全ての岩体は、磁鉄鉱系、Iタイプ、火山弧型花崗岩類に分類され、マントル物質を起源としていることが明らかになった。 鉱物に対するイオン交換平衡実験では、硫化鉱物である硫砒鉄鉱(FeAsS)と輝コバルト鉱(CoAsS)の2鉱物を対象としてNi、Mg、Co、Zn、FeおよびMnイオンに対するイオン交換平衡実験を500℃~800℃、1kbの超臨界熱水条件下で行なった。なお、硫砒鉄鉱は800℃において安定ではなかったため700℃までの条件下で実験を行なった。硫砒鉄鉱に対する実験では、Coより若干イオン半径の大きなところに頂点を有するPC-IR図が得られ、輝コバルト鉱に対する実験では、ほぼCoのイオン半径のところに頂点を有するPC-IR図が得られた。両鉱物に共通な結果として、Znが6配位に位置するため負の分配異常を示すとともに、Niに関しては正の分配異常が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においては、花崗岩類に対する調査および鉱物-熱水間におけるイオン交換平衡実験ともに、ほぼ計画通りに研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、カンボジアにおいて花崗岩類の調査を行なうとともに、新たな2鉱物を対象としてイオン交換平衡実験を行なう。 平成28年度においては、カンボジアの北東部において花崗岩類の調査を行なったので、平年度では南東部に産する花崗岩類を対象として調査を実施する。調査によって得られた花崗岩類の試料に対しては、偏光顕微鏡を用いた薄片観察、全岩化学組成分析、鉱物化学組成分析およびSr-Nd-Pb同位体分析を行なう。また、平成28年度に採取した試料も含め、ジルコンを用いたウラン-鉛年代測定を行なう予定である。また、時間的な余裕があればカンボジアに産する花崗岩類との比較のため、隣接するタイおよびヴェトナムでの花崗岩類の調査も行なう予定である。 イオン交換平衡実験に関しては、今までに対象として来なかった砒化鉱物である砒鉄鉱(FeAs2)およびサフロ鉱(CoAs2)を対象として、500℃~800℃、1kbの超臨界熱水条件下でNi、Mg、Co、Zn、FeおよびMnイオンに対するイオン交換平衡実験を行ない、イオンの分配挙動における複合酸化鉱物、珪酸塩鉱物、硫化鉱物との違いに関して考察を行なう。
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Causes of Carryover |
高温・高圧実験において、反応出発物質を外界から隔離するために封入材として金パイプを使用する。使用済みの金パイプは、再生・加工することにより後の実験に再利用される。再生・加工する金パイプの量が多いほど単位当たりの再生・加工料金が低くなるため、平成28年度では再生・加工すべき使用済みの金パイプの量が少なかったこともあり、再生加工を次年度送りにした。これが平成28年度に余剰金が生じた主たる理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度では、カンボジアおよびタイでの花崗岩調査を計画しており、その旅費に40万円ほど使用する。また、採取した花崗岩試料に対して、京都の総合地球環境学研究所において同位体分析をするとともに、産業技術総合研究所にて年代測定を行うことを計画しており、その旅費に40万円ほど使用する。 平成29年度では、砒化鉱物を用いてイオン交換平衡実験を行うが、そのための薬品代、分析装置の維持費に30万円ほど使用する。また、実験に使用した金パイプの再生・加工として20万円ほど使用する。
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