2017 Fiscal Year Research-status Report
高感度なγ線直線偏光度測定系の開発:核データとしてのスピン・パリティ決定のために
Project/Area Number |
16K06957
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小島 康明 名古屋大学, アイソトープ総合センター, 准教授 (80314730)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 直線偏光 / 核分光 / 核データ / γ線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は原子核の励起状態のスピン・パリティならびにγ線の多重極度を決めるために,γ線の直線偏光度測定を行うための高感度な測定系を開発し,それをウランの核分裂反応で生成される質量数150近傍の中性子過剰核に適用し,信頼性の高い核データを得ることを目指している.本年度は(1)スピン等が既知の標準線源(Co-60, Cs-137, Eu-152)を用いて最適な測定幾何条件を決めるための基礎実験を行い,(2)その後,京都大学原子炉実験所のオンライン同位体分離装置KUR-ISOLで生成・分離した中性子過剰短寿命核測定への適用を試みた. (1)については,既存設備であるクローバー型ゲルマニウム検出器を直線偏光度測定の主検出器とした上で,偏光の基準面を決めるための補助測定器(以下,測定器1)ならびに検出感度を補正するための測定器(同,測定器2)として3種類の異なるゲルマニウム検出器を様々な幾何学配置に置き,それぞれの条件で直線偏光度測定の感度を実験的に求めた.その結果,実際に偏光が測定できることを確認し,さらに,測定器1に相対効率60%の,測定器2に相対効率38%の検出器を使い,それらを線源との距離が10cmになる位置に置いたときに最も高い性能を示すことを明らかにした. これを踏まえて,測定系をKUR-ISOLに持ち込み,Cs-140(半減期63秒)およびLa-146(半減期6秒)の測定に適用した.しかしながら,KUR-ISOL側の装置の不具合が起きたため,短時間の実験しか行うことができず,十分な統計計数を得るには至らなかった.次年度も引き続き実験を行い,短寿命核へ適用できることを実証し,実験データが得られていないBa-145, La-147などのスピン,パリティ決定を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
直線偏光度が実際に測定できること,ならびに最適な測定器配置を明らかにすることは現在までに出来ている.しかしながら,本研究課題が目指しているウランの核分裂生成物を対象とした実験については,京都大学原子炉実験所の装置の不具合のため,十分に行うことが出来なかったため,予定よりやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,測定器一式を京都大学原子炉実験所に持ち込み,短寿命の核分裂生成物から放出されるγ線に対する直線偏光度測定を行う.京大炉での課題採択もされており,1週間の実験を2回実施できる見込みである.また,前年度に行った短時間の実験でバックグラウンドの問題が明らかになったため,バックグラウンド成分の除去(あるいは低減)を行うためにデータ解析方法を改良し,その妥当性をオフライン実験で確認する.
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Causes of Carryover |
前年度までに購入した測定機器類(既存設備を含む)を用いて,測定系の最適化に関する研究を主として行ったため,多額の費用を要しなかった. 残額は次年度助成金と合わせて,主として,京都大学原子炉実験所で実験を行うための旅費および測定関連器具の購入費として使用する予定である.
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