2016 Fiscal Year Research-status Report
大型計算機を用いた核燃料熱物性の第一原理計算による評価手法の開発
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16K06964
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中村 博樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究職 (40350483)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 二酸化アクチニド / 熱伝導率 / 分子動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、第一原理計算手法を用いて核燃料の主要成分である二酸化アクチニドの熱物性値の評価を行った。本年度の成果は以下の2つである。 1.二酸化トリウムに対して、第一原理分子動力学法を用いてエンタルピーなどの熱力学量の評価を行った。二酸化アクチニドでは融点より少し低い温度で超イオン伝導体に転移することが予測されていたが、分子動力学法のシミュレーション結果ではその温度がモデルに依存し、はっきりしていなかった。今回、経験的なパラメータを必要としない第一原理計算を用いて、シミュレーションした結果でも、超イオン伝導体転移を観測し、転移温度についても精密に評価することができた。この成果はJournal of Nuclear Materials誌に論文として発表した。 2.二酸化プルトニウム等に対して、第一原理計算を用いて格子振動による熱伝導率を評価した。第一原理計算による熱伝導率の評価手法は近年、大きな発展を遂げており、今回、その手法を二酸化アクチニドに応用した。この手法では、格子振動の性質を第一原理計算によって定量的に計算することで、熱伝導率を評価する。計算で得られた結果は二酸化プルトニウム、トリウムに対しては実験結果をよく再現し、この手法が有効であることが確認された。一方、二酸化ウランのような磁気秩序を持つ物質に対しては、実験値とのずれが見られ、さらに改良の必要があることが分かった。この成果は国際会議NuMat2016で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一原理分子動力学に関しては、二酸化トリウムに対して、熱物性の評価に成功し、論文として発表している。一方、熱伝導率に関しても、二酸化プルトニウム、二酸化トリウムに関しては成果が出ている。二酸化ウランの熱伝導率や第一原理分子動力学による高温領域での熱伝導率の評価などの課題は残るが、初年度の成果としては全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一原理分子動力学については、これまでは二酸化トリウムの熱平衡状態での物性値の評価に留まっていたが、今後は熱伝導率などの動的な物性値の評価に取り組んでいく予定である。一方、熱伝導率計算については、磁気秩序と熱伝導率の相関を明らかにするとともに、ポーラロンなどの格子振動以外の熱伝導率の評価も行っていくつもりである。
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Causes of Carryover |
購入したワークステーションの価格と国際会議のための海外出張費が想定よりも安かったことが原因で次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入したワークステーションにおける計算環境改善のために使用する。具体的には、ハードディスク、GPU等の追加、コンパイラー等のソフトウェア購入に用いる予定である。
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