2017 Fiscal Year Research-status Report
γ線多重層ビルドアップ係数表示式の系統的パラメータ推定に関する研究
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16K06967
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
平尾 好弘 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (70425750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 規宏 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 福島環境安全センター, 研究職 (80354760)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多重層遮蔽評価 / 点減衰核法 / 簡易計算 / γ線ビルドアップ係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.多重層BFモデル行列式に対する系統的なパラメータ推定法の検討 前年度に作成したモデル行列式のパラメータを、物理的な根拠をもって推定する方法を検討した。ポリエチレンと鉛の2重層BFのモデル行列式に対して、次の変数がパラメータに寄与する傾向と程度を調べた。 ・媒質原子番号、線源エネルギー、媒質厚さ、光電散乱及びコンプトン散乱の断面積、各層の単位媒質厚さに対する透過行列と反射行列(単位媒質厚さ行列) 相関分析・主因子分析を用いて高い相関のある変数とその範囲を調べた。例えば、線源エネルギーの低い所で単位媒質厚さ行列と相関が高く、媒質が厚いとエネルギーや単位媒質厚さより原子番号に依存し、また相関が薄い範囲も特定した。それらを場合分けして、下記2とともに、上の変数でパラメータフィットする方法を検討した。またKエッジや特性X線を扱えるように、特定のエネルギーに対してフィットを制御する方法を検討した。 2.CGの多層散乱光の処理等で、計算量を絞るため、媒質の性質をもとに視線方向に対する透過光と反射光の表現を簡略化する考え方がある。そうした考え方に基づき、ポリエチレンと鉛の多重層モデル行列式のパラメータを少ない変数による低次式でフィットできるか、また物理的な意味がない方法を導入してフィットの精度をあげられるか検討した。 3.提案する多重層BFモデル式を実験的に検証するため、遮蔽板を重ねて多重層を模擬し、透過スペクトル及び線量を様々な方向で測定するため、固定用治具付き台車を製作した。測定試験を行い、ポリエチレンと鉛の2重層遮蔽を模擬できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目は前年度に整備した多重層BFのリファレンスデータに基づき、提案した多重層BFモデル行列式のパラメータ推定法の検討と、検証実験の準備を行った。 パラメータ推定法については、代表的にポリエチレンと鉛の2重層を取り上げて関係する物理変数とパラメータとの相関性を調べ、場合分けを行ってパラメータフィットする方法を検討した。またできるだけ計算を速める必要から、計算量を抑える簡略化について検討した。相関のある所では低次のフィットが有効であり、それを基本にフィット精度を上げるために特別な項を導入するか、精度を求めず保守的なフィットにとどめて計算量を維持するか検討中である。 検証実験については、固定治具付き台車を製作し、1年目に製作した鉛板と現存遮蔽板とを併せて多重層を模擬した実測が可能になった。多重層の透過測定はあまり前例がないが、コバルト線源から数mfp以内のポリエチレン+鉛遮蔽を透過したスペクトルは、入射方向が垂直に近い所でリファレンス計算データとほぼ一致した。 研究の進捗について、計画よりやや遅れており、所属業務にエフォートがとられて計画の一部を進められず、研究発表を満足に行えなかった。パラメータ推定法の検討をポリエチレンと鉛の2重層でしか行えず、別の媒質の組み合わせや3重層への拡張について系統的な議論ができなかった。検証実験も多重層を模擬した測定が可能なことを確認したのみにとどまった。今年度は先に必要な検証実験を遂行し、モデル行列式の開発と検証について成果を発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間全体を通じての実施項目は全て着手済みである。今年度はまず必要な検証実験を実施し、媒質厚さや透過方向等の条件を変えて透過スペクトル及び透過線量を取得する。次に、上の実測を参照して、多重層BFモデル行列式の開発で未達の部分について下記の研究を行う。 ・ポリエチレンと鉛の媒質組み合わせをベースに、多重層BFモデル行列式のパラメータ推定法を引き続き開発して確立する。 ・同様に、コンクリートと鉄の組み合わせについて、確立したパラメータ推定法でモデル行列式を作成し、リファレンスデータ及び実測透過線量と比較して推定法の媒質依存性を検証する。 ・代表的な3重層であるポリエチレン、コンクリート、鉛の組み合わせについて、2重層と同様のパラメータ推定法でモデル行列式を作成し、リファレンスデータ及び実測透過線量と比較して推定法の層数依存性を検証する。 最後に、上の検証結果について考察し、リファレンスデータ及び実測透過スペクトルを参照して推定法の調整を行う。また外部発表を積極的に行い、成果と期待される効果のPRに努める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、検証実験のための治具付き台車の製作において、実際には計画よりかなり高額となり、データ整理のための人件費と相殺して差額が6万ほどでたこと、及び研究分担者を含めて外部発表を満足に実施できず、その分旅費を使用しなかったことによる。 翌年度の使用計画については、外部発表を積極的に行うための旅費、及び研究分担者・協力者と検証実験及び打ち合わせを行うための旅費、会議参加費、又は論文投稿料として使用する。
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