2018 Fiscal Year Research-status Report
γ線多重層ビルドアップ係数表示式の系統的パラメータ推定に関する研究
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16K06967
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
平尾 好弘 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (70425750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 規宏 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 福島環境安全センター, 研究職 (80354760)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多重層遮蔽 / 点減衰核法 / 簡易計算 / γ線ビルドアップ係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.多層散乱光CGモデルを援用したモデル行列式の簡略化 モデル行列式のパラメータを系統的に整理するため、前年度に調べた減衰と相関のある変数のうち、厚さ数mfpの媒質透過によるビルドアップを経た後、多重散乱光がCG的に一定のエネルギー分布をもった形で減衰する「(準)平衡スペクトル」状態に着目した。平衡スペクトルは媒質の断面積に依存し、透過距離に対して緩やかに指数減衰するが、その程度は、ビルドアップ計算の母数である非散乱線の減衰の程度と異なる。この非散乱線と平衡スペクトルの関係が薄いことがモデル式のパラメータを系統的に定める障害になることがわかった。そこで、非散乱線をひとまず措いて、平衡スペクトルの形成過程に着目し、形成を支配するγ線として「順透過γ線」を定義した。ポリ、鉄、鉛の主要遮蔽材に対するモンテカルロシミュレーションの結果、順透過γ線の線量は、媒質中の線量減衰と40mfpまで良く追従することがわかった。よって、媒質の平衡スペクトル(断面積依存)に依存したほぼ一定の補正係数を与えることで、透過距離に対する線量の外挿が可能と考えられる。また、40mfpまでの補正係数は、遮蔽厚1mfpの追加より小さく、平衡スペクトルベースの表現が適当であることもわかった。なお、こうして作成した平衡スペクトルベースの線量ビルドアップ表現式は、非散乱線の減衰を表わす行列を組み込むことで、元々のBFの定義に沿った形で扱うことが可能である。 2.多重層BFモデル式を実験的に検証するため、多重層を模擬して透過スペクトル及び線量の測定試験を行った。それに伴い、手持ちのγ線測定器の校正を行った。ポリエチレン(前)+鉛(後)、及び鉛(前)+ポリエチレン(後)の2重層に対する20mfpまでの測定を終えた。引き続き、コンクリートと鉄の2重層に対する測定を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全ての研究項目に着手しているが、進捗は前年度から計画よりやや遅れており、所属の請負業務にエフォートがとられて、研究及び発表を満足に行えなかったため、一年間の研究期間延長を申請して認められた。 昨年度までに計算して蓄積したデータに基づき、多層散乱光のCG等からヒントを得て、ある程度透過した後の平衡スペクトルをベースに通例の透過線量減衰から表現モデルの見直しを行った。そのために時間をとられ、さらにそれに関する論文発表を行う準備をしていたことで遅延を招いた。今年度は最終年として、多重層表現モデルの最終化と計算式の行列パラメータの整備を行い、検証実験との比較で計算結果の妥当性を証明する。また成果を整理してレポートの作成を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の1年延長による最終年として、成果の最終化、論文発表、及び成果レポートの作成を行う。昨年、それまで蓄積したデータに基づき、多層散乱光のCG等からヒントを得て、ある程度透過した後の平衡スペクトルをベースに通例の透過線量減衰から表現モデルの見直しを行った。これによって、媒質依存の平衡スペクトルと一定の補正を用いて透過距離に対する理論的・系統的な透過減衰表現が可能になった。今年度は、これに係る論文発表を行う。 また、この見直しに基づいて以前に開発した多重層BFモデル行列式を書き換え、主要遮蔽材に対する行列式パラメータの整備を行う。最後に、同行列式で計算した多重層の減衰カーブを、モンテカルロシミュレーション、及び2重層を模擬した検証実験との比較で妥当性を証明する。最後に、成果を整理して学会発表及びレポートを作成する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究分担者を含めて外部発表等を満足に実施できず、その分予定していた論文投稿料、国際会議発表・旅費、あるいは非常勤人件費を使用しなかったことによる。 今年度は、研究期間を1年延長したので、作業人件費、論文投稿、学会発表等を予定どおり実施して、成果を完成させて発表するために交付金を使用する。
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Remarks |
2017年から2年間、日本原子力学会放射線工学部会の下の簡易遮蔽計算コードレビューワーキング・グループの活動報告を上梓した。この中のアクションプランの一つに本研究課題の多重層遮蔽評価が含まれており、産官学の関心各位、共同研究者らとともに研究を実施している。
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