2016 Fiscal Year Research-status Report
分散型エネルギーシステム構築のための化学蓄熱セルシステムの要素研究
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16K06972
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中曽 浩一 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (40363379)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 再生可能エネルギー / 化学蓄熱 / 伝熱促進 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,さまざまな温度レベル・状態の未利用エネルギー,排熱等を熱源として蓄熱を行い,必要に応じた時期,場所,さらに規模で放熱を行うシステムの構築を目的として,化学蓄熱,特に吸着式ヒートポンプによる温熱生成に着目し,以下の点について検討した.①吸着材を封入した蓄熱セル内の伝熱促進法として,粒子間に熱伝導率の高い素材による架橋を形成させる方法に着目した.本法は,これまで実験的にしか検討されていなかったため,理論的な有効熱伝導率について数値的に検討した.また,②これまでの検討では,不活性なモデル球形粒子を用いた検討だったため,実際に反応性の粒子を用いて検討した.この他,既往の直接熱交換型の吸着式ヒートポンプを例にとり,システムの効率についても数値的に検討した. 具体的に,①については,接触する二粒子間と周囲の架橋および空気を解析領域として,一端を温度変化させたときの他方の温度変化を解析した.また,解析領域全体を均質体と仮定して熱伝導率を求め,先述の二粒子間のモデルと比較することで見かけの熱伝導率を推算した.その結果,架橋の体積分率0.2vol%で,架橋の存在しない場合に比べて見かけ熱伝導率14倍と,わずかな架橋の存在により急激に見かけの熱伝導率が上昇することがわかった.今後は,ガス透過性についても理論的に検討する.また,②については,伝熱促進のために添加する熱伝導率の高い素材が吸着材粒子表面にも付着するため,粒子表面に付着した促進材が反応性へ及ぼす影響を検討した.その結果,反応性に明確な差は確認されなかった.次に,吸着材粒子充填層を用いて,粒子間に架橋を形成させようと試みたが,多孔質の吸着材粒子では,架橋の形成が不十分であった.①の検討により,架橋により伝熱性能が大きく向上することがわかっているため,次年度以降は,多孔質粒子でも架橋が形成できる促進方法を検討する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度予定していた内容として,「蓄熱温度に応じた蓄熱条件の検討」,「発熱量の検討」,「ヒートコレクターの設計」,とあるが,研究代表者の異動により研究環境整備に時間を要したため,実験的な検討の実施が十分にできなかった.そのため,第2年度に実施予定であった,「蓄熱器内部構造の検討」を前倒しで行った.研究実績概要にもまとめたように,本研究で採用した伝熱促進法は,理論的には大きな伝熱促進効果があることが示されたが,実際に吸着粒子で行う場合の課題も明らかとなったので,次年度はその改善にもチャレンジする.
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Strategy for Future Research Activity |
当初,初年度に実施予定であった検討内容のうち,「蓄熱温度に応じた蓄熱条件の検討」と「ヒートコレクターの設計」を優先して行う.その際,最終年度に実施する予定の「模擬蓄放熱試験」への実施も視野に入れながら,実際の蓄放熱実験も交えながら検討を進める.また,初年度に前倒しして検討した「蓄熱器内部構造の検討」については,課題として明らかとなった,吸着粒子への適用について検討する.
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Causes of Carryover |
研究代表者が,当該年度の途中で異動して,予定していた実験を次年度以降に行うことになったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度に予定していた模擬蓄熱試験を前倒しで行うなど,実験をメインで行う予定である.このため,次年度は実験環境の整備のため,実験に必要な物品の購入を集中的に行う予定である.
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