2017 Fiscal Year Research-status Report
BD太陽集光装置の固体撹拌・直接加熱式蓄熱槽の開発
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16K06973
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
長瀬 慶紀 宮崎大学, 工学部, 教授 (90180489)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 蓄熱 / 太陽集光装置 / 再生可能エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,蓄熱装置に使用する蓄熱材料として物性値が明らかなアルミナ球,ステンレス球,炭素鋼球を用意し,BDSCにて加熱実験を行い,蓄熱材料の温度分布および入射熱量を計測し,蓄熱量ならびに蓄熱効率を求めた.これらの材料は,1000℃まで加熱可能であり,アルミナ球と比較して同じ体積で熱容量がほぼ等しいが,熱伝導率および熱拡散率がステンレス球が2倍,炭素鋼球が3倍である.実験の結果,最高温度は異なるものの,温度分布については3者とも大差がないことがわかった.これは,いずれも球体であるため,蓄熱粒子どうしは点で接触していることから,粒子自体の熱伝導率よりも粒子の間にある空気の熱伝導率が熱通過率へ大きく影響するためと考えられる.従って,蓄熱材料が球体の場合,加熱後の温度を均一にするためには蓄熱材料の熱伝導率はあまり考慮しなくとも良いことがわかった.一方,蓄熱材料の吸収率は,蓄熱温度および蓄熱効率に影響を受けることがわかった. 蓄熱材料の粒径については,3,5,10mmと粒径を変化させても蓄熱効率にはほとんど影響を受けないことがわかり,本装置では,ピストンとシリンダとの隙間を考慮して,粒径5 mmの蓄熱材料を使用することとした. 以上の蓄熱粒子に関する知見は,固体蓄熱材料の選定指針において重要である. また,蓄熱材料全体を耐熱温度近くまで加熱することで蓄熱量を増加させるため,蓄熱温度を均一にすることに主眼をおいた装置改良を行った.これは,太陽光の集中度が高い中心部分を全ての蓄熱粒子が通過することを狙ったもので,粒子の移動経路を制限するように改良したものである.実験では,蓄熱効率を15ポイント改善することができた.これは,固体蓄熱装置の蓄熱効率向上のために意義のある結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度計画では,蓄熱材料として物性値が明らかなアルミナ球,ステンレス球,炭素鋼球を用意し,BDSCにて加熱実験を行い,蓄熱材料の温度分布および入射熱量を計測し,蓄熱量ならびに蓄熱効率を求めることであり,天候不順の日が多かったため実験回数が少なかったものの,ほぼ予定した条件の実験を実施することができた. 蓄熱装置のピストンの移動速度を検討することを計画に入れており,蓄熱材料の最高温度から次のように決定した.すなわち,同じ太陽光入射条件での実験を行いたいので,ピストン速度は一定にする必要がある.そのため,3種類の蓄熱材料を同じピストン速度で移動させたとき,いずれの蓄熱材料についても最高温度がそれぞれの耐熱温度を超えないが,いずれかの耐熱温度に近くなるように決定した.今回は,平成28年度にアルミナ球での実験で,耐熱温度付近になるピストン速度条件を見つけていたので,このピストン速度で他の蓄熱材料を加熱した際に耐熱温度を超えないことを確認して,ピストン速度を決定できた. 蓄熱材料の粒径を検討することが当初の計画にあり,3,5,10mmと粒径を変化させた場合のBDSCによる加熱実験を行い,粒径は蓄熱効率へほとんど影響を与えないことがわかり,本装置では,ピストンとシリンダとの隙間を考慮して,蓄熱材料の粒径を5 mmに決定できた. 蓄熱材料全体を耐熱温度近くまで加熱することで蓄熱量を増加させるため,当初の計画では,蓄熱材料の熱伝導率や熱拡散率を変化させて蓄熱温度を均一にすることを目指していたが,これらの熱物性値は蓄熱温度均一化にあまり影響を与えないことがわかったため,装置の改良を行った.これは,当初の計画には含まれていないが,さらに蓄熱効率向上の検討を進めるための実験である.なお,改良した装置は最適化するための検討が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は,通常のタワー型太陽集光装置と違い太陽光を下向きに集光するBDSCのための蓄熱装置を開発し,タワー型のメリットである高温での蓄熱を実現することを目的としている.過去2年間は天候不順の日が多かったため,BDSCでの加熱実験における再現性を確認するための同一条件での実験回数は当初の計画と比べて少なかったものの,計画した全条件について一通りの実験を実施することができた. 最終年度の平成30年度は,当初の計画通り,開発した蓄熱装置の蓄熱効率を向上させるために,蓄熱材料自体の検討と蓄熱装置の改良を重点的に行う.蓄熱材料については,蓄熱装置内で集光した太陽光で直接加熱されるため,蓄熱材料の吸収率に着目し,今回使用した蓄熱材料の一つである炭素鋼球を酸化させて吸収率を上げ,蓄熱材料の吸収率が蓄熱効率へ及ぼす影響を検討する.一方,蓄熱装置の改良については,平成29年度に実施した装置の改良をもとに最適化を図る.また,これらの検討に加えて,これまで実施した実験の内,実験回数が少ないため信頼性に不安がある実験条件については,BDSCでの追加加熱実験を行い論文としてまとめる. 一方,経年変化によりBDSCの1次反射鏡であるヘリオスタットの反射角度がずれているという問題が生じているため,光軸を修正する必要がある.また,BDSCの焦点位置での放射流束の計測もあわせて行う必要がある.現在,光軸の調整は晴天時でなければ不可能であるため,蓄熱実験のための日数がさらに短縮されることが予想される.そのため,晴天時以外でも調整が行えるよう,レーザー光などの人工光源を利用したヘリオスタット光軸調整装置の検討を進める必要がある.
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