2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K06976
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
西宮 伸幸 日本大学, 理工学部, 教授 (90283499)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光刺激水素放出 / 水素貯蔵合金 / エネルギー輸送・貯蔵 / 水素化マグネシウム / コアシェル構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
MgH2:Pdの質量比が100:1となるようにパラジウムアセチルアセトナートをMgH2にミキサーミル混合し,真空中加熱によって水素放出させたところ,253 nmの紫外線を照射したときには水素放出温度が数十℃低下することが確認できた.MgH2の水素化・脱水素化の触媒として作用することが知られているNb2O5をMgH2に添加すると,水素放出は低温化したが,光照射によるさらなる低温化は見られなかった.触媒活性未知,光触媒活性公知のK4Nb6O17およびNi修飾K4Nb6O17を合成してMgH2に混合した系では,紫外光照射によって水素放出温度が逆に高温化した.触媒の作用で固相中の水素と気相の水素の平衡交換が速められた系であっても,水素が固相から気相に出る駆動力が不足していると考え,混合系に金を蒸着して気相の水素の再吸蔵ルートの遮断を試みたところ,蒸着後の試料をプレスして緻密にすると狙いどおり水素放出が促進された.Pd-Ni-K4Nb6O17に金を蒸着し,60 MPa でプレスしたものが最も低温で水素放出をおこしたが,100℃程度の低温化が見られたものの,目標の200℃低下は見通せていない. 実験の過程で,350℃付近から開始するメインの水素放出が,250℃付近で始まるようにシフトしたり,350℃付近と250℃付近の両方で始まるようになったりする類型差が,添加物ごとに見られることがわかった.固相内のMgH2の相転移に注目した解析を進めている. また,高圧の水素には水素透過のバリアとならず,低圧水素に対してはバリアとなることが期待されるFeTi,高圧の水素にも低圧の水素にもバリアとならないZrVFe,およびこれらのものの中間のTiZr(FeMn)2などの微粉末をミキサーミルで作成し,バルクと水素吸蔵放出性能が変わらないことを確かめた.金に代わる活性皮膜として期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
加圧式ガス透過による水素整流機能の検証が遅れている. MgH2:Pd系における光照射効果は準備段階の結果を再現するものであったが,添加物として期待していたNb2O5の効果が認められなかったため,急遽,通常の触媒効果と光触媒効果を併せ持つK4Nb6O17の合成に転じ,さらにNi修飾K4Nb6O17の合成へと進んだため,時間がかかった. 水素が固相から気相に出る駆動力を高めると予想した金は予想どおりの効果を示したが,単純な蒸着では効果が乏しく,蒸着後の試料をプレスする工夫が必要だったため,その条件探しにも時日を要した. 金の水素整流機能は30年ほど前に報告された例があるため,その確認をとくに急ぐ必要はないと考えていたのも遅れの原因となった.高圧の水素には水素透過のバリアとならず,低圧水素に対してはバリアとなるFeTiのような合金の特性解析を先に進めてしまったが,加圧式ガス透過にかけられる金の試験片の作成を急ぐべきであった.
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Strategy for Future Research Activity |
水素整流機能を有する合金系の探索を急ぐとともに,光照射低温化効果がもっと顕著に現れる複合系の探索を並行して進める. 本研究が実用に結びついた場合,高圧の水素には水素透過のバリアとならず,低圧水素に対してはバリアとなるFeTiのような合金に出番が来る.加圧式ガス透過にかけられる試験片の作成を急ぐとともに,この試験に耐えられる強度を有する合金膜の作製にも早期に取り組む. MgH2の原材料の劣化が光照射効果を低減させているおそれがあることがわかったため,試料を従来以上に慎重に不活性ガス中で扱い,EDXでMg:Oの比率をモニターしながら評価できるようにする.実験の再現性が上がり,遅れを回復できる見通しである.また,ミキサーミル混合の条件を最適化し,光照射で発生した活性種が長距離移動しなくても作用できるような混合形態を実現させる.走査電顕のほか,透過電顕による観察も行い,条件確立後は起動性を高めていく.
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Causes of Carryover |
2016年の6月に開催された第21回世界水素エネルギー会議(サラゴサ,スペイン)に出席した際は,マトリックス-修飾核の複合体の熱力学特性を報告するのが主で,コア-シェル複合体の光化学特性の報告は従であったため,会議出席の目的を本研究の分野の動向調査に置き,間接経費を充当した.その後,本研究の進捗状況を発表することを目的として別の国際会議に出席することを画策したが,候補とした国際会議が日本の学年暦と整合せず,校務に支障のない日程が組めなかったため,断念した.これが次年度使用額が生じた理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年7月に開催される第7回世界水素技術コンベンション(プラハ,チェコ)に出席して本研究の進捗状況を主に報告するほか,前年度実行できなかった光化学関係の国際会議でも研究報告する.前年度は学部4年生の担任という職務のため日程が合わなかった会議にアブストラクトを送り,採択されることを目指す.
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