2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K06976
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
西宮 伸幸 日本大学, 理工学部, 特任教授 (90283499)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光触媒 / 水素化マグネシウム / 水素貯蔵材料 / 酸化チタン |
Outline of Annual Research Achievements |
5質量%の酸化チタンを混和し、波長352nmの紫外線を照射することにより、水素化マグネシウムの真空中での水素放出温度を、開始温度で65度、ピーク温度で60度、それぞれ低下させることができた。水素化マグネシウムはアルドリッチ社製のもので、走査型電子顕微鏡観察によると粒径は10-50μmであり、酸化チタンは堺化学製のアナタースで粒径15nmである。混和はミキサーミルを用い、アルゴン雰囲気中で行った。真空中に放出された水素は四重極質量分析計でとらえ、吸着水の脱離に随伴する水素とは区別して計測した。 意外なことに、水素化マグネシウム単体でも光照射による水素放出温度の低温化が起こり、ピーク温度は12度低下した。前述の、5質量%の酸化チタンを添加した時のピーク温度の60度の低下の内訳は、44度が酸化チタンの共存によるもの、16度が光照射効果であった。酸化チタンの添加量を変えて352nmの吸光度と光照射による水素放出温度の低温化の相関を取ると良い正の相関が得られるため、光照射効果は明らかに存在する。水素化マグネシウムの主吸収ピークは211nmにあるが、300nm付近からブロードな吸収が立ち上がり、352nmにおいて0.07程度の吸光度を水素化マグネシウム自身が有することがこれらの現象の背景となっている。 酸化チタンの添加量を20質量%に増やすと、ピーク温度の低下は5度にとどまり、内訳は、酸化チタンの共存効果が29度、光照射効果が逆効果の24度となった。透過型電子顕微鏡観察によると、水素化マグネシウムは10nm程度の一次粒子の集合体であり、水素放出は一次粒子の集塊化を伴うことから、酸化チタンの添加量が多すぎると阻害が起こると考えられる。また、光が水素化マグネシウムに到達する効率が下がることも問題となる。 問題解決のため、水素化マグネシウムと酸化チタンの間に金を介在させる試料を成功裏に作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
再現性の確保に問題があり、同じ実験を何度も繰り返し、試料間比較が精度高くできるようになるのに時日を要した。当初より、水素化マグネシウムの取り扱いはアルゴングローブボックスで行い、酸化チタンの混和をミキサーミルで行う際もアルゴン封止を標準工程としていたが、結局、開封済の水素化マグネシウムを使いまわすことに問題があることを突き止めるのに時間がかかった。アルドリッチ社製の水素化マグネシウムは不活性ガスに封止された二重缶で10gずつ供給されていたが、これをグローブボックス内で開封した後、グローブボックス内であっても長くはとっておけず、短期間で使い切ったり、次の缶へ移行したりする必要があることがわかった。 真空中に放出された水素を四重極質量分析計でとらえる装置においても、イオン源のフィラメントがマグネシウム蒸気に汚染されることが原因とみられる断線を起こし、フィラメント交換前後のデータを比較するのに困難を生じた。 水素化マグネシウムと酸化チタンの間に金を介在させる試料を作成する過程で、水素化マグネシウムをプレス成型してから金蒸着する工程を試みたが、空気による酸化劣化が原因とみられる試料の水素放出能力の低下を防止しきれず、結局、試料粉体そのものに金蒸着する方法に戻ることとなり、途中の時間を空費することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
同一時期に同一人物が同一の実験条件(四重極質量分析計のイオン源のフィラメントのような消耗品的な部材の状況も含む)で行った実験結果しか有効に利用できていないため、時期や実験者が異なる場合の比較実験の結果も再整理し、水素化マグネシウム自身の光化学プロセス、酸化チタンなどの光触媒の作用機構、および光触媒が共存することによる非光化学的触媒作用に分離して、研究成果の厚みを増していく。 水素貯蔵材料への触媒添加を定量的に議論するためには、何も添加されていない出発試料の物性を一定に保つことが肝要であるが、一定であることの保証のために室温以下の低温で水素吸蔵等温線を測定して、指紋のように用いることが重要であることがわかったため、このことを成果の形にまとめていく。
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Causes of Carryover |
消耗品等を購入した際に端数として残額が生じた。 残額については、次年度に国際会議で成果発表する際の原資に加算して有効に使用する。
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