2017 Fiscal Year Research-status Report
神経活動の正規化と発振現象を統一的に説明する異種感覚統合モデルの構築
Project/Area Number |
16K06984
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大城 朝一 東北大学, 医学系研究科, 助教 (40311568)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 異種感覚統合 / infra-slow oscillation / neuro-vascular coupling / 抑制性細胞 / 神経活動における非線形性 / 血管運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
(サル頭頂葉における多感覚統合)多感覚統合に関する神経活動正規化モデル(大城ら、2011年)によると、脳の多感覚領域の神経細胞は全く同一の感覚刺激入力であっても、同時に入力する別の感覚刺激の提示条件に応じて興奮性に作用したり、逆に抑制性に作用することがありえる事が予想される。米国ロチェスター大学のGregory C. DeAngelis 教授との共同研究により、視覚情報と平衡感覚情報が統合されるサル頭頂葉の電気生理学的実験を行い、この予想を確かめた。研究成果は2017年夏に米神経科学雑誌Neuronに掲載された。 (ラットにおける神経活動律動現象)大脳において機能している主な抑制性神経伝達物質であるGABAの合成酵素(GAD65)のノックアウトラットは、癲癇を高頻度に発症する極めて有用なモデルラットである。群馬大学の柳川右千代教授との共同研究により、このラットでの睡眠時の脳波、癲癇発作時の異常脳波を解析している。脳波を測定する際に用いる小型電極ガイドを京セラ社と共同で開発し、産学共同特許の出願を行った。この小型電極の優れた周波数特性とノックアウトラットの脳波の解析結果に関してH29年度日本てんかん学会(京都)において発表を行った。 (神経活動正規化と神経活動律動現象を結び付けるイメージング研究) 麻酔中ラット脳のイメージング研究から、脳活動には非常に低速(~0.1Hz)な律動成分が含まれていることを見出した。その律動は単一感覚入力によって惹起された神経活動によって開始することが明らかとなり、現在、視覚刺激と体性感覚刺激からなる多感覚刺激によって律動成分がどのように変化するかについて解析を行っている。またこの低速律動は大脳における血管の自発運動に由来することを明らかにし、日本神経科学会(幕張メッセ 千葉)、日本生理学会(サンポート高松 香川)にて口頭発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米国ロチェスター大学のGregory C. DeAngelis 教授との共同研究により行ったサル頭頂葉における多感覚統合の研究結果は、米神経科学雑誌Neuronに掲載された(Ohshiro et al., 2017)。 柳川右千代教授との共同研究では、GAD65ラットでの癲癇発作時の脳波を安定して計測できるよう研究環境が整った。得られた結果は現在専門誌に投稿準備中である。また別のGABA合成酵素、GAD67のノックアウトラットについても脳波解析を始めたところである。 大脳皮質における低周波神経律動現象に関わる神経伝達物質の候補のひとつとしてヒスタミンを同定した。現在、ヒスタミン合成酵素や受容体遺伝子のノックアウトマウスを入手し、解析を開始したところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
京セラ社と共同で開発した小型電極に関しては最大16個までラット脳に埋め込み、脳波同時記録を目指す。視覚刺激と体性感覚刺激からなる多感覚刺激によってどのような脳波成分が大脳表面上に分布するか解析を行う予定である。さらに同時並行して、イメージング法により低速(~0.1Hz)律動成分が多感覚刺激によってどのように脳表面に分布するかを解析することで、神経活動正規化と神経活動律動現象の生物学的役割について追求する。
|
Causes of Carryover |
(理由)本年度の予算額は十分に消化できたが、前年度からの繰越金が一部残ったため。 (使用計画)次年度の予算と合わせ、初年度購入予定であった高速演算コンピューターの購入を予定している。
|