2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K06991
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小田 洋一 名古屋大学, 理学研究科, 名誉教授 (00144444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東島 眞一 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 教授 (80270479)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マウスナー細胞 / 相反抑制 / T型網様体ニューロン / 逃避運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳には形態が似ている形態学的相同ニューロンが繰り返し配置されている構造がみられ、機能的にも関係があると考えられてきた。我々はこれまでに硬骨魚の後脳分節に繰り返し存在する網様体脊髄路ニューロン群に注目し、形態学的相同性と機能的な相同性の関係を調べてきた。後脳の第4分節に左右1対存在する巨大な網様体脊髄路ニューロンであるマウスナー細胞(M細胞)は魚の逃避運動を駆動するニューロンとして知られているが、我々はM細胞がほかの網様体脊髄路ニューロンに多シナプス性に結合していて、その結合様式が形態学的相同性を反映していることを見出した。本研究では、ゼブラフィッシュにおいて、その結合を中継するT型網様体ニューロン群に着目した。T型網様体ニューロン群は細胞体からT字形の軸索を伸ばす特異的な形態を示し、よく似た形態を持つニューロン群が後脳後部におよそ8対が繰り返し配置されている。しかし、最も吻側部に位置する2対(Ta1細胞とTa2細胞)がほかのT型網様体ニューロン群より大きな細胞体を持つ。また、トランスジェニックゼブラフィッシュ(Tol056)で、T型網様体ニューロン群の中でTa1細胞とTa2細胞のみがGFPを発現する。電気生理学的および形態学的解析を行った結果、2対の形態は極めて酷似していて、ともにM細胞から単シナプス性の興奮性入力を受け、両側のM細胞に抑制性介在ニューロンを介して、強力な抑制を与えていることを明らかにした。更に、Ta1細胞とTa2細胞の破壊により、両側のM細胞がほぼ同時に発火する確率が上昇し、その結果、M細胞によって駆動される逃避運動の最初に見られる体の屈曲が阻害されることを見出し、Ta1細胞とTa2細胞が、左右のM細胞間の抑制(相反抑制)に重要な役割を果たしていると結論した。これらの成果は4報の国際誌に発表した。また、国内学会で1件発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
形態学的に相同なT型網様体ニューロン群のうち、吻側にある2対(Ta1細胞とTa2細胞)が他に比べて大きな細胞体を持っていることと、機能的にも左右脳間の抑制に大きく寄与すること生理学的および行動学的にも示し、その成果を米国神経科学学会誌(Journal of Neuroscience)等に発表した。ニューロンの形態学的同定、ニューロン間結合の電気生理学的解析およびイメージングに加え、対象細胞の役割の生理学的・行動学的解析を行い、完成度の高い研究成果となった。左右のマウスナー細胞間の相反抑制回路の存在は古くより知られていたが、その回路構成とマウスナー細胞の活動と逃避運動における役割が初めて明らかにされた意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
今回調べた受精後5日齢のゼブラフィッシュでは、Ta1細胞とTa2細胞を介する左右のM細胞間の相反抑制が機能していることが確かめられたので、今後はそれ以前の早い段階での発達過程を検討する。
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Causes of Carryover |
発達過程に関する研究を遂行する必要があり、2019年度まで研究期間を延長した。繰り越し予算は主に、その研究を行う博士研究員の雇用費、実験消耗品費および研究旅費に用いる。
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Research Products
(5 results)