2017 Fiscal Year Research-status Report
霊長類モデルを用いた神経活動多領域多点記録によるトゥーレット症候群の病態解明
Project/Area Number |
16K06995
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
二宮 太平 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (40586343)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トゥーレット症候群 / 霊長類 / 多領域多点同時記録 / 周波数解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、独自に開発したチック霊長類モデルを用いて、大脳皮質、大脳基底核、視床、および小脳から神経活動の多領域多点同時記録を実施し、神経ネットワークの活動を解析することで、大脳基底核以外の脳領域のトゥーレット症候群(TS)への関与の有無、およびチック発現の神経基盤の解明を目指す。さらにはこの研究結果を元に、各記録部位への脳深部刺激(DBS)によるTSの治療効果を検討することを目的とする。 現在、2頭のTSモデルザルに関して、多領域多点同時記録により取得したデータの解析をおこなっている。各脳領域において、単一神経細胞活動については発火頻度や発火パターンを、局所電場電位(LFP)についてはパワースペクトル密度などを中心に解析し、特徴的な発振現象があることを見出している。例えばパーキンソン病についても、神経活動の特徴的な発振現象が知られているが、TSモデルにおける発振現象の周波数はパーキンソン病のものとは異なるため、TS特異的な発振現象であると考えられる。またこれらのデータを元に、領域間の相互作用について解析を進めており、TS発現時に異常な同期現象が起こっている可能性を示唆する結果も得ている。これらの研究結果については、「Phase-amplitude coupling解析を用いた大脳皮質-大脳基底核-小脳回路の機能連関解析」というタイトルで第40回日本神経科学大会にて報告した。 今後は、トレーニングを進めていた3頭目のTSモデルザルについても実験を進め、更なるデータの取得と解析、および脳深部刺激の適用可能性に関する検討をおこなっていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究実施計画では、(1)TSモデルザルにおける多領域からの神経活動の同時記録と(2)取得したデータと平成28年度に取得したコントロールデータとの比較を研究計画の中心として設定していた。 (1)については概ね完了しており、(2)についても一定の結果が得られていることから、全体として研究が順調に進展していると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は3頭目のチックモデルの作製およびデータの取得、これまでに取得しているデータのさらなる解析、さらにはTSサルモデルへの脳深部刺激(DBS)の実施による治療効果の検討をおこなう。具体的な刺激部位についてはこれまでの実験結果を踏まえて決定するが、特に小脳核を中心に有効なDBS 適用部位を探索する。DBSの効果は神経活動、筋活動、およびビデオによる行動評価に基づいて総合的に判定する。
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Causes of Carryover |
(理由) 平成29年度予定していた研究計画の遂行にあたって、当初考えていたよりも消耗品(特に神経活動記録用の電極)の使用を抑えることができたため、当該の次年度使用額が生じた。 (使用計画) 解析の速度を上げるためコンピューターのパーツを購入する予定である。また、当初予定していたより実験回数を増やし、より多くのデータを取得できるよう電気生理実験で用いる消耗品費にも充てる予定である。
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