2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K07004
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
渡部 文子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (00334277)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 扁桃体 / 光遺伝学 / シナプス可塑性 / 情動 / 経路特異性 |
Outline of Annual Research Achievements |
痛みなどの無条件刺激と条件刺激との連合学習である恐怖条件付けには、扁桃体基底外側核が責任領域とされてきたが、近年、扁桃体中心核も情動記憶形成に積極的に関与することが示されている。しかしながら、これらアプローチは分子生物学・行動学的手法が中心であり、電気生理学的解析は大きく遅れていた。一方、情動を担う扁桃体への痛み伝達経路として、橋の腕傍核から視床・皮質を経ずに中心核へ直接入力する直接路が示されていた。我々は従来の研究成果により、強い恐怖記憶形成後、直接路に顕著なシナプス増強を見出した。さらに、直接路の光遺伝学的刺激により「痛み」刺激無しで人工的な恐怖記憶を作ることにも成功した。以上の結果は直接路の情動記憶への関与を示唆するが、扁桃体神経核における経路特異的な生理的意義やそのシナプス増強の分子機構に関しては不明な点が多い。 そこで本研究では、シナプス増強の分子機構を明らかにし、個体において光遺伝学的に可塑性を操作することで、情動学習制御における痛み神経回路可塑性の意義を、分子から個体レベルまで一貫して解明することを目的として研究を行った。 本年度の研究実績として、細胞種特異的な神経回路の可視化とその操作手法を確立した。さらに可塑性制御の分子メカニズムを明らかにしつつある。これらの知見を応用してより生理的状態を反映する刺激プロトコールを確立するとともに、個体レベルでの行動変化を検討することで、痛み情動経路可塑性の制御機構とその生理的意義を分子レベルから個体まで一貫して明らかにすることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
扁桃体の神経回路を細胞種特異的に操作介入する手法を確立し、可塑性制御の分子メカニズムに関しても知見を得ており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、光遺伝学的手法を用いて細胞種特異的なシナプス伝達特性の詳細な解析を行うと共に、生理的状態を反映するようなシナプス刺激プロトコールを確立する。さらに、個体レベルでの行動変化を検討することで、痛み情動経路可塑性の制御機構とその生理的意義を分子レベルから個体まで一貫して明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
研究遂行は順調に進んでいるが、他プロジェクト成果から新たな光遺伝学的ツールが開発されたため、本事業の目的をより精緻に達成するにはこの新ツールを追加して研究を進めることが有用であると考えられ、次年度使用を計画した。
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